脱原発を超えて、持続可能な文明への方向—本の紹介—
現在、日本は、311大震災にともなって起った福島第1原子力発電所の深刻な事故の結果、原発の必要性/不必要性が、真剣に検討されている。昨年夏の実績から判断し、また今夏の予想によれば、日本の電力需要は、原発なしで賄えることは明白である。しかるに、自民現政権は、国内原発再稼働,原発海外輸出に力を入れている。なぜか、それは、原発によって利権を得ている電力企業とそれに関連する企業が、その利権を確保することに固執しているからであろう。そして、原発立地の自治体のあるものは、自治体政権を掌握するものが、原発関連による利益を継続して保持しておきたいためであり、国全体,国民多数の幸福などは無視している。それよりも、原爆、原発がもたらす、自然にはない放射性物質は、本質的に生命とは相容れないものであり、これの継続使用は、人類、いや地球上の全生命を滅ぼしかねない(落合栄一郎著「原爆と原発—放射能は生命と相入れない」(鹿砦社、2012年)。
これは実はほんの1例に過ぎず、現在の人類社会では、少数の企業家/資本家などの利益の増大への固執が、大多数の人々を不幸に陥れている。そして、利益の増大は、いわゆる「成長経済」によってなされ、そして多くの国民も経済は成長あるのみ、成長なくば、不幸になると思いこんでおり、アベノミックスなる幼稚な経済成長策に惑わされている。
人々がもっともっとモノを消費することのみが奨励されている。現在の地球上の人類70億が、日本や欧米諸国と同じ程度の物質を消費することになれば,地球の資源が枯渇すること、いやとてもそれだけでは足りないことは目に見えている。ということは、おそらく次ぎの世代の人間には、ほとんど何も残らないであろう。(“花は花は花は咲く、私はなにを残しただろう”ー本当に私達は、なにを残すことになるだろう;何も残らなくなるのでなるのではないだろうか)そして、こうした物質への飽くなき渇望は、資源獲得のための、国際紛争をさらに激しくさせる。
すなわち、現在の人類の諸問題は、こうした人類の物質欲の無制限な増大、それを促して、儲けようとする少数の人間達の金銭欲に起因するところが多い。こうした人類文明は、アメリカという国、その国民、企業家達に代表される。
さてこうした問題のいくつかを考察した書を紹介させてください。それは,最近発行された「病む現代文明を超えて持続可能な文明へ」(落合栄一郎著、本の泉社刊)です。ここにその目次を添付しますので、どうか、ご覧になって、検討、議論、批判などなど、こうした問題に皆さんが目を向けて下されば幸いです。なを、表紙は現代画家の最新作「メルトダウン」で、それだけでも一見の価値があるかと思います。
「病む現代文明を超えて持続可能な文明へ」
著者:落合栄一郎
292頁、2013年5月28日発行、本の泉社
目次
第1部 アメリカ文明の黄昏
1章 アメリカの帝国主義的心情と戦争意識
1.1.初期の歴史
1.2.アメリカの戦争意識の基礎
1.3.アメリカの平和主義者達・リベラル派
1.4.人類の将来とアメリカ
2章 アメリカ帝国主義の一形態—エコノミックヒットマンの物語
3章 非軍事面での帝国主義
3.1.優生学
3.2.食料を制するものは人間を制す
3.3.緑の革命
3.4.農畜産業の工業化
3.5.遺伝子革命
3.6.最後にー自然の反抗—
4章 政治・戦争・新自由主義における「悪」
5章 アメリカ的文明の黄昏
5.1.市場資本主義の退廃—コーポラテイズム
5.2.覇権主義—奢り
5.3.アメリカ的文明の持続不可能性
第2部 人類の当面する基本的問題
第6章 法人の人格という問題
6.1.成立過程とその影響
6.2.法人の人格とその責任
6.3.「企業の人格」を否定する動き
第7章 ペーパーマネーのあやふやさ
7.1.「カネ」とはなにか
7.2.投機による諸物価の高騰
7.3.金融危機に関して
7.4.金融危機再びか
7.5.ユーロ圏の財政危機とTPP問題
第8章 人口問題-1
8.1.世界人口ついに70億
8.2.人口問題と生物多様性の減少̶人間中心主義
第9章 新自由主義̶市場経済の退廃
9.1.グローバル化(貿易の完全自由化)の是非
9.2.企業の様々なごまかし・不正・不法行為
9.3.製薬会社の犯罪的行為
9.4.資源獲得競争
9.5.軍事国家アメリカ
9.6.アメリカの武器輸出
9.7.中国という国
9.8.アメリカ/NATOによる中国・ロシア包囲
第10章 成長経済からの脱却
10.1.成長>収縮>定常経済へ
10.2.少ない物質で有意義に生きるという挑戦
10.3.自己抑制精神の欠如
第11章 宗教への妄信と選民意識
11.1.人間はなぜ権威というものに追随するのか
11.2.オスローの悲劇とその背景̶選民意識̶
第12章 科学・技術信仰/専門化/教育など
12.1.科学・技術への信仰と悪用
12.2.人間社会の専門分化と体制維持
12.3.教育のありかた
第3部 アメリカ的文明・経済危機を乗りこえて持続可能な文明へ
13章 総論
13.1.概観
13.2.歴史的展望
13.3.持続可能な未来社会のアウトライン
14章 物質的・エネルギー的制約、物理的制約—気候変動など
14.1.エネルギー的制約
14.2.物質的制約
14.3.物理的制約
15章 人口問題-2
15.1.人口と食料
15.2.人口の制御
16章 21世紀初頭の経済体系の問題—持続可能文明形成を阻むもの
16.1.必要と需要—新古典派経済学—
16.2.新古典派経済から新自由主義へ
16.3.グローバリズム
16.4.カネとモノを等価と看做す誤り-1-未来のデイスカウント
16.5.カネとモノを等価と看做す誤り-2-金融の経済支配
17章 江戸期のモデル
17.1.持続した社会—概観
17.2.なぜ江戸社会は持続できたか
17.3.「自己制御(抑制)」の精神
18章 持続可能な未来文明のイメージ
18.1.持続可能な社会(文明)の概観
18.2.資源・エネルギー・環境
18.3.インフラストラクチャー
18.4.個人の開発
18.5.社会システム
18.6.政治システム
18.7.経済システム
19章 持続可能文明への道のり
19.1.世界観・価値観の変革
19.2.経済通念と経済産業構造の変革
19.3.変革実現の仕方
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午前 6:01さん
確かに日本の原発以外への予算配分はいびつなほど偏頗でしたね。斯様にして「日本は原発に依存しなければエネルギー危機に陥る」と選択肢を恣意的にしぼめながら国民を欺き惑わす手口はいかにも稚拙でした。
それゆえ反対運動も各地で起きていたのですがマスコミを統制している官僚はそれをふうじこめてここまで強引に原発を推進してきたのですから驚愕です。
ナイス感謝します。
2012/11/23(金) 午後 6:39