食品の放射能汚染はいまどうなっているの?(その1:基礎、米)
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「安全な放射線量」はありません
現在、日本の食品基準は基本的に放射性セシウム(134+137)100ベクレル/キログラムです。
311以前、100ベクレル/キログラムを超える廃棄物は「放射性廃棄物」として処理されてきました。ごみとして廃棄するに際して、100ベクレル/キログラムを超えるようではヒトに害を与える可能性があります。今はその100ベクレル/キログラムが、食べて内部被ばくしてもいいかどうかの基準になっているのです。
では、何ベクレル/キログラム以下の食べ物なら、安全なのでしょうか?
この問いに答えることは不可能です。
たびたび申し上げてきたように(例えば「100ミリシーベルト以下でも危ないです!」)、どんなに低線量の被ばくでも、被ばく量に比例してがんが増えると考えられています。これはICRP(国際放射線防護委員会)も認めていることです。
被ばく線量が低くなればなるほどがんになる率は小さくなりますが、決してゼロにはなりません。放射能に「安全な量」はないのです。
チェルノブイリ原発事故により、ウクライナ、ベラルーシ、ロシアをはじめヨーロッパ各国の国土が、311後の東日本と同様、放射性物質でひどく汚染されました。特に汚染のひどかったウクライナ、ベラルーシなどでは、食品の放射能規制は行われていますが、今でも「地産地消」で放射能汚染された食材が使われ、住民が内部被ばくしています。
セシウム137が11ベクレル/体重キログラムで心電図異常
ベラルーシの研究者・バンダジェフスキーは、子どもたちの放射能汚染度を調べ、体重1キログラム当たり11ベクレルを超えるセシウム137を蓄積した子どもでは、心電図異常のない子どもが半減していることを明らかにしています。
セシウム137を毎日10ベクレル食べると・・・・
上の図2の基本はICRP(国際放射線防護委員会)がPublication 111で示しているものです。
例えば1,000ベクレルのセシウム137を含む食品を食べた場合(図2の緑の線)、最初の数日はセシウム137がどんどん体外に排出され、体内のセシウム137は急激に減っていきます。
その後は110日で半分にしか減らないので、600日経っても少しは体内に残っています。
他方、10ベクレルのセシウム137を含む食品を毎日食べた場合(図2の青線)、体内のセシウム137はどんどん蓄積していきます。体内のセシウム137が増えると排出される量も増えるので、大体1,400ベクレルで蓄積する量と排出される量が釣り合い、一定になります。
体重70キロの想定なので、体重1キロ当たり20ベクレルのセシウム137がたまることになります。毎日10ベクレルで20ベクレル/キロたまるわけです。
図2は成人の場合の計算です。子どもの場合はセシウムを排出する速度が早いので一定になるレベルは低いのですが、体重が少ないので、やはりほぼ20ベクレル/キロたまります。
図1では11ベクレル/キロで心電図異常が増えています。毎日6ベクレル食べると12ベクレル/キロになります。
1日に2キロ食べるとすると、3ベクレル/キロの食品を毎日食べると、心電図異常が出るレベルという計算になります。
日本全国の汚染状況
上の図から分かるように、少なくとも岩手、宮城、山形、福島、茨城、栃木、群馬、新潟、千葉、埼玉、長野の各県、東京都、の一部は明らかに放射性セシウム で汚染されています。従って、例えば福島県産の玄米が汚染されていれば、他の各汚染都県産も大なり小なり、汚染されていると考えるべきでしょう。
食品の汚染状況(目安)
各食品の汚染状況は以下の頁にありますが、最初におおまかな汚染度分類を載せておきます。
ここでは、2012年産以降の食品が40ベクレル/キロ以上が報告されているものは「汚染度高」と表示しています。40という数字はタケノコの汚染度に基づいています。
検出限界が1ベクレル/キロ未満でも放射性セシウムが検出されないものを「汚染度低」とし、「高」と「低」の間を「中」としました。
以上の説明からもお分かりいただけると思いますが、この汚染度分類はあくまでも目安です。
汚染度が高、中のものは東日本産を避け、せめて西日本産、あるいは外国産のものを選ぶことをお勧めします。但し、これはあくまでも問題を放射性セシウムに限定しての議論です。
また、カツオ、マグロ、ブリ、サバなどの大型の回遊魚は5年くらい生きるそうですから、西日本で採れたものでも安心できないでしょう。
食品の汚染具合を調べるには・・・
下記の農水省のホームページや厚労省のホームページから食品の放射能検査結果が分かります。
お米の汚染は?
まず、主食の米を調べてみます。
上記の農水省のホームページから、「農産物に含まれる放射性セシウム濃度の検査結果」→「品目別、都県別の検査結果」→「平成25年度の検査結果」→「品目別の検査結果」→「米」→「米(福島県)」と進むと、福島県のホームページに移動、2013年産の福島米の検査結果が分かります。
残念ながら、福島県の米は「ベルトコンベア式放射性セシウム濃度検査器」でスクリーニング検査されているので、測定限界が25ベクレルです。
3ベクレル/キロを問題にしているのに、これでは話になりません。
福島県の米の取引が低迷している(2013年12月26日 朝日新聞朝刊・福島版31面)のは当然でしょう。
福島以外の米は?
農水省ホームページから作図
農水省のサイトから食品の検査データをダウンロードすると上のようなエクセルの表で表示されます。膨大なデータが載っています。例えば栃木県のお米のデータを知りたい時はフィルターを使います。
上の図の○がフィルターです。例えば産地欄の都道府県セルにあるフィルターをクリックすると、下の図のように、初期設定ではすべての都道府県にチェックが入っています。
下の図のように「すべて選択」のチェックをはずし、「栃木県」だけをチェックすると、栃木県のデータだけを見ることができます。「すべて選択」をチェックすれば、また全部のデータを見られます。
万一、フィルターが表示されない時は、エクセルで「データ」→フィルターをクリックします。
このようにして各県別に集計すると、下のグラフのようになりました。
栃木県のデータを見ると、例えばキロ当たり7ベクレル以上・8ベクレル未満の玄米は91件ありました。11ベクレル以上のデータは例えば11.5ベクレル/キロというように測定値が出ていますが、大部分は検出限界(○.○ベクレル/キロ)未満という表示です。
不思議なことに栃木県のデータは8ベクレル未満を中心に両側にほぼ同様に分布しています。まるで、例えば7.5ベクレルと測定されたデータを8ベクレル未満と表示しているかのようです。
上の図は検出限界以上の玄米の結果です。宮城県でも50ベクレル/キロ近いものもあります。
「米どころ」新潟県産の米についても、検出限界の高いデータが大部分です。
新潟県産玄米(Bq/kg) | ||
新潟県発表 | 農水省発表 | |
2011年 | <20 | なし |
2012年 | <7.7 | <1.0 1検体 |
2013年 | <6.1 | <5.7~<8.6 72検体 |
農研機構の発表(下図)によると、精米により放射性セシウムは約4割にまで減ります。
その1 基礎、米 |
その2 野菜、タケノコ、キノコ、果実 |
その3 魚、肉 |
1月20日被ばく学習会「国連科学委の安全論は正しいか?」
1月の学習会は「国連科学委の安全論は正しいか?」です。
昨年10月、国連科学委員会は福島原発事故について、一般公衆の被ばく線量は低いので はっきりした健康影響は出ないだろうとする報告書を国連総会に提出し、1月中にも安全論を国際的に大々的に拡散しようとしています。
しかし、福島の子どもたちに甲状腺がんが多発しています。国連科学委の安全論は本当なのでしょうか?
市民団体の声明を主導されたヒューマンライツナウの伊藤和子さん、科学的記述を点検された瀬川嘉之さんのお話を伺って考えたいと思います。
「国連科学委 相関図」田島直樹(放射線被ばくを学習する会)
「市民が送った声明と国連科学委報告書」 伊藤和子さん
(ヒューマンライツナウ・副理事長、弁護士)
「科学的記述の問題点」 瀬川嘉之さん
(高木学校、放射線被ばくを学習する会)
1月20日(月) 午後6時15分~9時20分
アカデミー湯島・視聴覚室
地下鉄千代田線「湯島」駅から徒歩6分、
丸の内線・大江戸線「本郷三丁目」駅から7~9分
「湯島天神入口」交差点近く
文京区湯島2-28-14
団体名は「安全な環境を考える会」です。
参加費(資料代込み):700円
資料準備のため、参加される方は anti-hibaku@ab.auone-net.jp へご連絡ください。
主催:放射線被ばくを学習する会
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