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原子力規制委員会はICRP勧告111を改ざんして 「帰還基準20ミリシーベルト」を打ち出した!

PDFファイルはこちらからダウンロードできます。

 2013年11月20日、原子力規制委員会は「帰還に向けた安全・安心対策に関する検討チーム」がまとめた「基本的考え方(案)」を基本的に了承しました。

 その要点は以下のとおりです。



.「100ミリシーベルト以下では健康リスクの明らかな増加を証明することは難しいと国際的に認識されている。」

.事故後は公衆の線量限度・年間1ミリシーベルトを適用しない。

.原発事故後の収束過程では長期的な目標として1~20mSvの下方部分から選択すべきとされており、20mSv未満は必須である。

.空間線量でなく、個人線量を重視する。

 この4項目はすべておかしなことだらけです。

10ミリシーベルトでもがんが0.3%増加する

10sv  

図1 M.J.Eisenberg et.al. Canadian Medical Association Journal 183 430-436(2011)

 以前のブログ記事にも書きましたが、上の図に見られるように、カナダの病院に入院した心筋梗塞患者の調査によると、検査・治療で医療被曝を受けた患者さんは、医療被曝を受けなかった患者さんに比べ、10ミリシーベルト被ばくでがんが3%増えることが明らかになっています。

原爆では34ミリシーベルトでがん死増

Pnas20032

図2 D.J.Brenner 他 Proc.N.A.S. 100 13761-13766(2003) を改変

 放射線被ばくによる発がん・がん死増加のデータで一番信頼度が高いとされているのがヒロシマ・ナガサキの被爆者データです。

 平均20ミリシーベルト(5~50ミリシーベルト)、平均29ミリシーベルト(5~100ミリシーベルト)被ばくの場合もがん死亡率が増えていますが、誤差範囲です。

 しかし平均34ミリシーベルト(5~125ミリシーベルト)以上では誤差範囲を超えて、間違いなくがん死亡率が増えています。

 原爆被爆者でも、100ミリシーベルト以下、34ミリシーベルトでがん死亡率がふえることが明らかになっているのです。

しきい値はない

Lss14  

 原爆被爆者の調査は米国・ABCC(原爆傷害調査委員会)を引き継いだ放射線影響研究所(放影研)によって行われてきました。放影研は「原子力ムラ」の中枢に位置する研究機関です。

 その放影研が昨年発表した「寿命調査14報」では、上のグラフのように、線量に比例してがん死亡率が増加すること、被ばくしてもがん死亡率が増えない「しきい値」はゼロであり、「しきい値」はないことが明らかになっています。

 また、0~200ミリシーベルトの被爆者では間違いなくがん死亡率が増えていると報告されています。これは図2の「平均47ミリシーベルト」被爆群を意味すると思われます。

放影研が論文要約を偽造し、「100ミリシーベルト安全論」を擁護! 
著者による日本語の要約

 全固形がんについて過剰相対危険度が有意となる最小推定線量範囲は0–0.2 Gyであり、定型的な線量閾値解析では閾値は示されず、ゼロ線量が最良の閾値推定値であった。
放影研の要約

 総固形がん死亡の過剰相対リスクは被曝放射線量に対して直線の線量反応関係を示し、その最も適合するモデル直線の閾値はゼロであるが、リスクが有意となる線量域は0.20 Gy以上であった。

 上の表は図3が掲載された「寿命調査14報」の日本語要約です。どちらも放影研のホームページに掲載されています。

 左側は「寿命調査14報」著者が論文要約を日本語に翻訳したものです。

 右側は著者とは別に、放影研が書いた「要約」です。「リスクが有意となる線量域は0.2Gy(=200ミリシーベルト:ブログ著者の註)以上であった」としています。実際は先に触れたように、平均47ミリシーベルトです。

 放影研は論文要約の偽造まで行う組織なのです。

原発労働者でも13.3ミリシーベルトでがん死3.5%増

Photo_2

 このブログの記事「放射線によるがん死は『推定』の10倍だった!」で述べたように、日本の原発労働者についても、平均累積13.3ミリシーベルトでがん死が3.5%増えることが分かっています。これは累積100ミリシーベルトも被ばくしたらがん死が26%増えるということです。

 「帰還の安全・安心対策に関する基本的考え方(案)」の第1項は「100ミリシーベルト以下では健康リスクの明らかな増加を証明することは難しいと国際的に認識されている」とうたっていますが、これはまったく誤りです。

事故後は線量限度・1ミリシーベルトを放棄

 「核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律に基づく告示」により、原発の
「周辺監視区域(=敷地境界)」外の線量限度は、実効線量について1年間につき1ミリシーベルトと決められています。

 これはICRP(国際放射線防護協会)の勧告に基づいて、公衆の線量限度を年1ミリシーベルトと決め、敷地境界外では年1ミリシーベルト以上の追加被ばくをさせないという条件で原発の建設・運転を認めているのです。

 ところが実際は過酷事故などまったく想定しないズサン審査で原発は建設・運転され、福島原発事故を起こしてしまい、東日本をはじめ非常に広範囲の国土で1ミリシーベルトの線量限度をオーバーする事態になりました。

 これは東電・政府の責任であり、線量限度を守れるように措置しなければなりません。

 ところが政府は福島原発事故発生と同時に原発労働者の「線量限度」を引き上げ、一般公衆の線量限度は事実上放棄しました。

 その根拠とされているのがICRP勧告103(2007年)などです。

”大量被ばくしても諦めなさい”-ICRP勧告

 1986年のチェルノブイリ事故後、ヨーロッパの広範な国土が汚染され、1ミリシーベルトの線量限度を守れなくなりました。

 そこでICRPは、原発事故後は「線量限度」を適用しないこととし、原発事故後直後は年間100ミリシーベルト以下、事故後の回復過程では20ミリシーベルト以下の「参考レベル」を設定すればいい、と勧告したのです(2007年 Publication 103)。

 要するに、原発事故で汚染されてしまったのだから、1ミリシーベルトをはるかに超えるほど被ばくしても諦めなさい、ということです。

 ICRPは事故後の回復過程を「現存被ばく状況」と表現しています。まさに「汚染されちゃったんだからしょうがないじゃん!」ということです。

ICRPの勧告を改ざんした規制委

 ところが原子力規制委員会は、このICRP勧告さえもねじ曲げ、改ざんして年間20ミリシーベルトを強要しています。

ICRP勧告111(2008年) 原子力規制委員会・帰還の基本的考え方
1~20mSvのバンドの下方部分から選択すべき 長期的な目標として・・・下方部分から選択・・
過去の経験は、長期の事故後の状況における最適化プロセスを拘束するために用いられる代表的な値が1mSv/年であることを示している」 過去の経験から、この目標は、長期の事故後では年間1mSvが適切であるとしている
(事故後の最初から1mSv/年) (何年も後に1mSv/年にすればいい)

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 ICRP勧告111は主に原発事故後の長期汚染地域に住む住民の健康を守るため、年間1ミリシーベルトの「参考レベル」を推奨しています。実際、 これまでの例を見ても、上の表「長期汚染地帯の規制値」にあるように、事故後、あるいは事故1年後から年間1ミリシーベルトで規制している例が圧倒的で す。

 ところが原子力規制委員会の「基本的考え方」は、上の表に見られるように、この勧告の文章を少しずつ書き換え、「何年もたってから1ミリシーベル トにすれば当面20ミリシーベルトで構わない」とICRPが勧告しているように偽造し、「長期目標として、帰還後に個人が受ける追加被ばく線量が年間1ミ リシーベルト以下になるよう目指すこと」を条件に、20ミリシーベルトを打ち出しています

ガラスバッジ測定値はあまりにも低すぎる

 「基本的考え方」の決定に際して原子力規制委員会が参考にした資料の37頁に、空間線量から計算した被ばく線量と、ガラスバッジで測定した個人被ばく線量の比較表が載っています。その結果をグラフにしました。

Photo  

 上のグラフの縦棒一本一本は、福島県内の各地で測定された住民72人~52,000人余りのデータの平均値です。

 「計算値」は航空機モニタリングのデータから計算しているので放射性セシウムによる追加被ばく線量です。屋外8時間、屋内16時間で、屋内での線量は屋外の4割として計算しているので、空間線量の6割になります。

 24時間屋内にいても空間線量の4割なので、ガラスバッジ測定値は「計算値」の3分の2

にしかならないはずです。

 ところが実際のガラスバッジ測定値は「計算値」の0.11~0.38で、あまりにも低すぎます。

 福島県浜通りの中学生以下438人の平均で、ガラスバッジ測定値が年間0ミリシーベルトという例さえ載っています。

 ガラスバッジ測定値はなんでこんなに低いのでしょうか?

ガラスバッジのブラックボックス

Photo_3 もともとガラスバッジは、原発労働者や医療従事者などの職業被ばくを測定するために使われてきました。職業被ばくのない場所に置いたガラスバッジ(コントロール・バッジ)の線量を差し引いて、職業被ばくによる線量を測定します。

 福島原発事故後のように広範囲に汚染されてしまうと、コントロール・バッジをどこに置くかが問題になります。

 日本でガラスバッジを扱っているのは、千代田テクノル(株)と長瀬ランダウア(株)です。

 おしどりマコ・ケンの調査によると、最大手の千代田テクノル(株)はつくば(茨城県)の事業所にコントロール・バッジを置いているそうですが、そこの線量は分かりません。

 長瀬ランダウア(株)は「市によっては市役所の建物の中だとか、教育関係の建物の中にコントロールバッジを置いて」いるとのことです。これだとコントロール・バッジの線量が高くなってしまいます。

 多くの自治体では、コントロール・バッジの線量を公開していないようです。このようにガラスバッジにはブラックボックスがあります。

 ガラスバッジの最大の問題点は、住民が自分で線量を確認できないことです。

 累積被ばく線量を随時デジタル表示する線量計もありますが、ガラスバッジは1ヶ月とか3ヶ月ごとに回収して業者が測定した結果を信じるしかないのです。それこそブラックボックスです。

 ブラックボックスを信じて線量を「自己管理」せよなどというのは、土台無理な話です。

ICRP勧告111の改ざんに基づく
「帰還基準20ミリシーベルト」を撤回させよう!

 11月20日の原子力規制委員会では、提案された「帰還に向けた安全・安心対策に関する基本的考え方(案)」に対し、更田委員がいみじくも”安全 を確保する前に住民の「不安解消」に必死になっているイメージだ”という旨の発言をし、田中委員長が「低線量被ばくに関して、安全ということを科学的に言 える状況にはないわけで、だからこそ不安があるわけです(議事録15頁)。」 と認める場面もありました。

 結局、「基本的考え方(案)」は基本的に了承され、原子力災害対策本部(原災本部)に提出されることとなりました。

 原災本部で了承されれば、20ミリシーベルト未満の地域の避難指示が解除され、東電の賠償金支払いを停止し、帰還促進の圧力が急激に高められるでしょう。

 年間20ミリシーベルトで帰還なんて、とんでもないことです! 5年いるだけで100ミリシーベルトです。しかも被ばくによる発がん増加はICRP推定の約10倍です

 20ミリシーベルト帰還基準がICRP勧告111の改ざんに基づくことを多くの人々に知らせ、20ミリ基準を撤回させよう!

(アース)

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