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2013年10月

福島沖で1700倍以上のセシウム汚染! コントロールもブロックも破綻している!

福島原発事故前の海のセシウム濃度は?

 毎日300~400トンの汚染水、600億ベクレルの放射性セシウム・ストロンチウム(2013年9月19日 日経新聞)が海に流出していると報道されています。

 他方、安倍首相は「コントロールされている。0.3Km2の範囲内にブロックされている」と公言しています。菅官房長官は原発の港湾の内外で汚染水を含む海水が出入りしていることを認めながら「汚染水の影響については完全にブロックされている」と強弁しています。

 本当にそうでしょうか?

 そもそも、福島原発事故以前は、海の放射能汚染はどの程度だったのでしょうか。

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図1 「Impacts of the Fukushima Nuclear Power Plants on Marine Radioactivity(K.Buesseler,M.Aoyama,M.Fukusawa)」より

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 1960年代に繰り返された大気圏内核実験とチェルノブイリ事故で大量の死の灰がまき散らされましたが、2000年代には海の水1m3(立方メートル)=約1トン当たり1ベクレルのレベルです。

 原子力規制庁が所管している「環境放射線データベース」によると、福島原発事故前の2010年、日本各地の海水の平均濃度は、セシウム137が0.8ベクレル/m3、ストロンチウム90が1.2ベクレル/m3でした。

現在の濃度は?

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図2 「東京電力福島第一原子力発電所周辺の放射能濃度分布(2013年10月4日)」

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 ところが最新のデータによると、上の図に見られるように、福島原発周辺の海岸近くのセシウム137濃度は81~470ベクレル/m3、海岸から約3キロ地点でも11~19ベクレル/m3。

 3キロも離れた外洋でも、事故以前の海水の13~23倍も汚染されているのです。

 10月10日、東電は福島第一原発の沖合1キロの地点で1,400ベクレル/m3のセシウム137を検出したと発表しました。事故前平均0.8ベクレルの実に1,750倍です。

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 「コントロールされている」「ブロックされている」は完全に破綻しています。

現在の主な汚染源は3号機!

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図3 東電資料「タービン建屋東側における地下水および海水中の放射性物質濃度の状況等について」

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 470ベクレル/m3にも達するこのセシウム汚染はどういう経路で生じているのでしょうか。

 上の図3は福島原発の海に面した場所のセシウム137濃度(2013年9月16日前後、東電測定)を示しています。

 一番濃度が高いのは、3号機の排水口です。シルトフェンス内側では44万ベクレル/m3に達しています。

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図4 2013年9月19日 TBSテレビ「News23」より

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 主に3号機排水口から大量のセシウム137が排出されています。

 シルトフェンスの外側では3.1万ベクレル/m3(左側)とか5万ベクレル/m3(右側)に低下しています。

 シルトフェンスは厚手のカーテンのようなもので、セシウムの拡散を防ぐことはできませんが、拡散を遅らせることはできます。

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図5 同上

 その結果、0.3Km2の港湾内はほぼ2,000~3,000ベクレル/m3にとどまっています。

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図6 同上

 港湾内の海水は、もう一枚のシルトフェンスを通過して、5号機、6号機の取水口から取り込まれ、5・6号機を冷却した後、5・6号機放水口から放出されます。

5・6号機も核燃料に異常!?

 5・6号機放水口から放出されている水のセシウム137濃度はどの程度なのでしょうか?

 気象庁気象研究所の青山道夫・主任研究官は9月18日、IAEA(国際原子力機関)の科学フォーラムでこの放水口から毎日300億ベクレルのセシウム137(とストロンチウム90)が海に放出されていることを明らかにしています。

 毎日毎日、約300億ベクレルものセシウム137と、同濃度のストロンチウムが海を汚染し続けているのです。 

 この放水口からの流量は1日168,000トンとされている(2013年9月21日 神戸新聞朝刊4面 「20130921kobem4.jpg」をダウンロード)ので、排水のセシウム137濃度は約18万ベクレル/m3です(東電は放水口の30メートル北側で2,300ベクレル/m3を検出していますが、これは放水口近くの海水で薄められた濃度です)。

 6号機取水口前のセシウム137濃度はせいぜい4,700ベクレル/m3程度です。

 それが5・6号機を冷却して排水される時には、18万ベクレルにもなっているというのは、一体どういうことでしょうか。

 5号機、6号機は事故当時、無事に停止したとされていますが、本当は核燃料に異常が生じているのではないでしょうか。

汚染隠しの姑息な方法

 海のセシウム137濃度は通常、1ベクレル/m3程度ですから、「ベクレル/m3(=ミリベクレル/リットル」)で表示すべきものです。

 先に触れた「環境放射線データベース」でも、「ミリベクレル/リットル」単位で記しています。

 ところが東電は事故当時は「ベクレル/cm3」で示していました。「ベクレルm3」の100万倍の単位です。1ベクレル/m3でも、ベクレル/cm3なら、ゼロにされてしまいます。

 さすがに現在は「ベクレル/リットル」単位に変えていますが、例えば図3に見られる福島第一原発の港湾外のセシウム137測定は、検出限界がせいぜい0.5ベクレル/リットル程度です。

 0.4ベクレル/リットル=400ベクレル/m3でも、「不検出(=ND)」にされてしまうのです!

 港湾外はすべて「ND=不検出)」と表示している図3は、こうして作られています。

 何とも姑息な汚染隠しの手口です。

(アース)

追伸:ちなみに、図2のようにベクレル/m3レベルまで表示される測定データは原子力規制庁のホームページに載っていました。 

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2013年10月現在、0.12μSv/h以上の場所は管理区域。住むなんて、とんでもない!

汚染密度4ベクレル/平方センチ以上は管理区域

 「放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律」、「労働安全衛生法」など現行の法律では、以下の場所はどちらも、放射線の「管理区域」と決められています。

1.外部被ばく 1.3ミリシーベルト/3月 以上
2.表面汚染密度 4ベクレル/平方センチ 以上
   (α線を出さない放射性同位元素)

 1は外部被ばくを少なくするための措置です。1.3ミリシーベルト/3月=5.2ミリシーベルト/年ですから、当然です。

 2は内部被ばくを避けるための措置です。汚染されている所では体に放射性物質がくっついて被ばくしたり、体内に取り込んでしまう可能性があるからです。

管理区域では飲食・喫煙禁止

 管理区域内では、飲食、喫煙は禁止されています(電離放射線障害防止規則第41条の2)。

4ベクレル/cm2=4万ベクレル/m2=0.12マイクロシーベルト/時
(2013年10月現在)

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 上の地図は、2013年10月現在、放射性セシウムだけで4ベクレル/平方センチ(=4万ベクレル/平方メートル)を超えると思われる「管理区域」を赤く塗り分けたものです。

 福島県、栃木県、群馬県、茨城県の南北だけでなく、千葉県柏市付近、さらに岩手県奥州市・一関市にまで広がっています。

 上の地図は文科省が2011年8月に発表した航空機モニタリングの結果を元に、セシウム134と137の減衰を考慮しています(事故時のセシウム134:137=1:1と想定、ベクレル数は原図作成時=2011年11月に比べ、0.76に減衰)

 空間線量で見ると、2013年10月現在、0.12マイクロシーベルト/時以上が「管理区域」です。

 セシウム134は137にくらべ崩壊時のエネルギーが約2.4倍※なので、空間線量への影響が大きいのですが、半減期は2年で、半減期30年の137より早く減衰します。

 このため、ベクレル数の減少よりも空間線量の減少の方が早くなります。

 文科省は「1マイクロシーベルト/時=セシウム276,008ベクレル/m2(2011年6月基準)」と発表しています(16頁)。この時点では、約0.15マイクロシーベルト/時=4万ベクレル/平方メートルでした。

自然放射線による線量として0.04マイクロシーベルト/時を加えると、約0.19マイクロシーベルト/時=4万ベクレル(セシウム134+137)/平方メートルでした。

 その後の減衰と自然放射線を計算に入れると、2015年6月現在では0.15マイクロシーベルト/時の空間線量率が管理区域に相当します。

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 2015年12月までの期間について、管理区域に相当する空間線量を示したのが上のグラフです(図をクリックすると大きな画像をみられます)

管理区域で生活することは許されません!

 原発で働いている作業員でさえ、表面汚染密度4万ベクレル/m2以上の管理区域では飲食・喫煙が禁止されています。

 放射性物質が体や食物などに付いて、内部被ばくする危険性があるからです。

 ましてや、今多くの人々が4万ベクレル/m2以上の汚染土壌の上で暮らしています。風が吹けば土の微粒子についた放射性セシウムが舞い上がり、吸い込んでしまいます。

 昨年2月に福島県郡山市で6日間陰干しした大根に3,421ベクレル/キログラムもの放射性セシウムが付着しています。

 管理区域で生活しては、いけないのです。

 これは現在の放射線防護の法律に書かれていることです。

 政府・東電は、少なくとも2011年3月11日以降、管理区域に相当した地域の人々に避難の権利を認めなければならないのです。

 ちなみに、この管理区域相当区域での追加被ばく線量は年間1.0ミリシーベルト(2015年6月現在)~1.3ミリシーベルト(2011年3月現在)です。 

※ 「核データの表」によると、セシウム137の1回の崩壊で出るガンマ線エネルギーを平均すると、

 283.5keV×0.0006+661.7keV×0.851=563.3keV 

 セシウム134の場合は、

  569.3keV×0.1537+604.7keV×0.976+795.9keV×0.855+847keV×0.0003

=1,358.4keV。

 従って、セシウム134のガンマ線エネルギーは、137に比べ、1,358.4keV/563.3keV=約2.4倍です。

(アース)

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