廃棄物を地下に埋めるのは、こんなに危ない! (その2)地震で放射能水が噴き出す!?
「核廃棄物を地下に埋めるのはこんなに危ない(その1)」で書いたように、核燃料を「発電」に使うと、燃料棒の放射能は約1億倍へと激増します。
1億倍に増やしてしまった高レベル放射性廃棄物が元の放射能に戻るには10万年はかかると言われています。
10万年もの間安全を保つには、一体どう処分すればいいのでしょうか?
日本初の商用原発・東海発電所が着工したのが1960年1月。
それから1年以上経った1961年2月、ようやく原子力委員会に廃棄物処理専門部会が設置され、処分方針の検討が始まりました。
高レベル放射性廃棄物の最終処分については、容器に入れて深海に投棄する方法と、地下に埋める方法が検討されました。
昭和37年4月11日 原子力委員会 委員長 三木 武夫殿 廃棄物処理専門部会
部会長 斎藤 信房 (3)最終処分方式 この最終処分方式としては次の2方式があげられる。 これらの方式については放射性廃棄物の最終処分の問題の重要性にかんがみ、経済性、安全性について最も望ましい方式を確立するため、 大きな努力を払って研究を進めなければならないが、国土が狭あいで、地震のあるわが国では最も可能性のある最終処分方式としては深海投棄であろう。 |
地震を考えると、地下に埋めるのは無理で、深海に投棄するしかない、というのが50年前(昭和37年=1962年)の結論だったのです(これは昭和39年6月の最終報告でも同様です)。
この「深海投棄」にしても、「廃棄物は低および中レベルのものに止めるべきで、高レベルのものについてはその研究の進展により、安全性が確認されるまでは行なうべきでないと考える。」
とされていました。
結局、使用済み核燃料など高レベル放射性廃棄物の処分方法はなかったのです。
1972年にはロンドン条約で海洋投棄が禁止されました。
地震の危険性を無視して高レベル放射性廃棄物を地下に埋める「地層処分」へと突っ走っていくことになったのです。
上に述べた「廃棄物処理専門部会」の中間報告が出されたのと同じ日に、「再処理部会」が報告書を提出し、使用済み核燃料の再処理を打ち出しています。
使用済み燃料は崩壊熱を出しているので使用済み核燃料プールで冷却水を循環させ、冷やし続けなければなりません。
5年程度経つと、キャスクに入れて空冷しながら再処理工場に運び込むことができるようになります。
クリックすると大きな画像を表示します。
再処理では、使用済み核燃料を3~4センチずつに切断し、硝酸液につけてウラン、プルトニウム、核分裂生成物などを溶かします。
使用済み核燃料を切断すると、強烈な放射能の核分裂生成物が出てきます。「原発1年分の放射能を1日で出す」と言われる、極めて危険な作業です。
おまけに、溶かすための硝酸は猛烈な劇薬です。
さらにウラン溶液と、プルトニウム溶液を分離し、核分裂生成物が溶けた廃液は特殊ガラスと混ぜ合わせて、ステンレス製の容器(キャニスター)に流し込み、冷やして固めます。
こうして作られたガラス固化体は「高レベル放射性廃棄物」と呼ばれます。
六ヶ所村の再処理工場で作られる予定のガラス固化体は、直径43センチ、高さ134センチ、総重量500キロ。
容量は170リットルで、ドラム缶(200リットル)より細長く、容量はやや小さい。
このガラス固化体1本の放射能は、製造直後は平均4,000兆ベクレル、表面の放射線量は1,500シーベルト/時=250シーベルト/分≒4シーベルト/秒。
約2秒で100%の人が死亡する線量(7シーベルト)です。
ガラス固化体になっても放射性核種が崩壊し続けているので、製造直後の発熱量は約2,300ワット、表面温度は200℃以上になります。
クリックすると大きな画像を表示します。
ガラス固化体は30~50年間、地中で空冷しながら貯蔵し、放射能と温度が下がるのを待ちます。
茨城県東海村の再処理工場は1981年に本格運転を開始、約1,000トンの使用済み核燃料を処理、247本のガラス固化体にし、ガラス固化技術開発施設で保管しています。
1997年に火災事故を起こし、現在は運転を停止しています。
1993年から2兆円以上の税金を投じて青森県六ヶ所村に処理能力の大きな再処理工場の建設が始まりましたが、トラブル続きで、未だにガラス固化体はできていません。
六ヶ所村の高レベル放射性廃棄物貯蔵管理センターには、英仏で作られたガラス固化体が保管されています。
貯蔵区域や検査室は、厚さ約1.5~2mの鉄筋コンクリート壁で囲まれ、放射線を遮へいしています。
ガラス固化体を50年間冷却すると、ようやく350ワットまで下がりますが、表面の放射線はまだ約160シーベルト/時=約2.7シーベルト/分もあります。
そこで、上の図にあるように、ガラス固化体を厚さ19センチほどの金属製の「オーバーパック」に入れます。
これでようやく、表面の放射線が2.7ミリシーベルト/時=2700マイクロシーベルト/時になります。
それでもまだ、80センチのコンクリート壁で遮蔽しないと近づけません。
オーバーパックの周囲に、ベントナイトとけい砂でできた緩衝材ブロックを積み上げ、 地下水が浸透して放射性物質が漏れるのを抑えます。
ガラス固化体+オーバーパック+緩衝材による「人工バリア」を地下300メートル以下に埋める(「地層処分」)ことが計画されています。
政府はこれを「人工バリア」と「天然バリア」による「多重バリアシステム」と称しています。
クリックすると大きな画像を表示します。
「多重バリア」って、どこかで聞いたような気がしませんか?
原子炉も「五重の壁」に守られてるから安全だと言われてましたよね。
どこの市町村も地層処分を受け入れていないので、地層・地質などの「研究施設」が岐阜県瑞浪(みずなみ)市と北海道幌延(ほろのべ)町に作られています。
NHKの番組から岐阜県瑞浪市の「東濃地下学センター」の様子を見てみましょう。
ここの地下300メートルの様子です。
岩肌から水滴がしたたり落ちています。
トンネルの床には水がたまっています。
こんな状況で10万年も安全に保管できるのでしょうか?
核燃料サイクル開発機構は1999年、「わが国における高レベル放射性廃棄物地層処分の技術的信頼性—地層処分研究開発第2次取りまとめ—」を発表しています。
それによると、高レベル放射性廃棄物は鋼鉄製の容器などで覆われ、「人工バリア」の形で岩盤の中に埋められます。
年月とともに容器の腐食が進みますが、漏れ出すまで1,000年は耐えられるとしています。
その後、廃棄物は地下水によって運ばれる可能性があります。
しかし岩盤の中の流れはゆるやかなため、地表に到達するのは数万年以降。
その頃には放射能は安全なレベルに下がっていると試算しています。
2000年に「特定放射性廃棄物の最終処分に関する法律」が制定されました。
この法律では「地下三百メートル以上の・・・地層において、特定放射性廃棄物及びこれによって汚染された物が飛散し、流出し、又は地下に浸透することがないように必要な措置を講じて安全かつ確実に埋設する」としていますが、実際には地下に浸透すると予想されています。
国は 「活断層を避けて処分すれば安全」としてきましたが、2000年10月の鳥取県西部地震(マグニチュード7.3)は活断層がないと考えられていた場所で起こりました。
神戸大学の石橋克彦名誉教授は「陸域の浅い大地震が繰り返し発生しても、活断層が認められないことが少なくない」と指摘しています。
2011年には、地層処分の安全性を疑わせる決定的な事態が明らかになりました。
2011年3月11日の東日本大震災の1ヶ月後、4月11日に福島県いわき市で震度6弱の地震が起きました。
その直後から、毎秒4リットルもの地下水があふれ出てきて、未だに続いています。
活断層がずれたことによって、地下水の道に大きな力が加わり、
水を一気に地表まで押し上げたと考えられています。
大きな地震が起きると、岩盤という「天然のバリア」が機能しなくなる恐れがあると石橋さんは指摘しています。
「今現在、われわれの世代で『ここなら10万年間大丈夫ですよ』という場所を選べるかっていうと、具体的に指定できるかっていうと、それはできない。
一言で言えば、この日本列島で地層処分をやるというのは、未来世代に多大な迷惑をかけるかもしれない、かける可能性のある、非常に無責任な巨大な賭けだと思うんですよね。」(石橋克彦名誉教授・談)。
「地層処分に関する法律」に基づいて地層処分を行う事業体・原子力発電環境整備機構(NUMO;ニューモ)が発足、地層処分の場所を探していますが、候補地すら見つかっていません。
そこで原子力委員長が2010年、学術会議に対し、高レベル放射性廃棄物の処分について国民にどう説明すればいいか、検討を依頼しました。
これを受けて学術会議は2012年9月11日、「回答 高レベル放射性廃棄物の処分について」を発表しました。
その中で学術会議は
「東日本大震災は・・・自然現象の不確実性を適切に考慮すべきという強い警鐘を鳴らした(回答 4頁)」のであり、
「万年単位に及ぶ超長期にわたって安定した地層を確認することに対して、現在の科学的知識と技術的能力では限界があることを明確に自覚する必要があ(同 5頁)」り、
「従来の政策枠組みをいったん白紙に戻すくらいの覚悟を持って、見直しをすることが必要(同 iii頁)」で、
「『特定放射性廃棄物の最終処分に関する法律』の改正、ならびに、主要な事業担当者である『原子力発電環境整備機構』の位置づけの変更という課題に取り組む必要がある」
として、地層処分方針の撤回が必要だと述べています。
第1に、使用済み核燃料で一番危ないのは、福島第一原発4号機5階のプールで冷却されている物です。
度重なる地震と隣の3号機の爆発で使用済み核燃料プールが損傷しました。東電は補強工事が行い、震度6強に耐えるとしていますが、信憑性に?がつきます。
さらなる地震などでプールが壊れ、冷却できなくなれば、核燃料が燃え、放射性物質が大量に飛散する恐れがあります。
「最悪のシナリオ」です。
クリックすると大きな画像を表示します。
東海再処理工場と六ヶ所再処理工場に、ガラス固化される前の高レベル放射性廃液が貯まっていて、これが冷却できなくなると、もっと恐ろしい惨事になると言われています。
第2に、使用済み核燃料の処理について考える前提として、原発ゼロ、核燃料サイクル停止が必要です。
学術会議の「回答」は「最終処分」の前に、まず「暫定保管」することを提案しています。
暫定保管とは、「高レベル放射性廃棄物を、一定の暫定的期間に限って、その後のより長期的期間における責任ある対処方法を検討し決定する時間を確保するために、回収可能性を備えた形で、安全性に厳重な配慮をしつつ保管すること」
とされています。
上の図にあるように、サトウカエデの国旗の国・カナダでは60年程度の暫定保管が実施されています。
学術会議は「数十年から数百年程度のモラトリアム期間」としています。
現状でいきなり地層処分するのは安全性を保証できないし、同意を得られる場所もない。
とりあえず数十年から数百年、地上あるいは浅い地下にできるだけ安全に保管して、その間に処分方法や場所について国民的議論をしていこう、というわけです。
現在は地層処分推進の法律ができていますが、これを撤廃して、ゼロから考えることが必要です。
使用済み核燃料を暫定保管するためには、プールに入れて水で冷やす方式は危険性が大きいです。
福島第一原発4号機のように、停電すると冷やせなくなる恐れがあります。
下の図のようなキャスクに入れて、空冷する方が停電などの影響を受けにくいと言われています。
ただし、キャスクに入れるためには、まずプールで5年程度冷却し、発熱量が下がるのを待つ必要があります。
クリックすると大きな画像を表示します。
![]() |
東電は福島第一原発で使用済み核燃料408本を乾式キャスクで保管していて、津波に襲われたが、今のところ異常は見られないとしています。 |
「リサイクル燃料貯蔵センター探訪記」より |
「リサイクル燃料貯蔵株式会社」って、何をする会社か、分かりますか?
青森県むつ市で、東電4,000本、日本原電1,000本の使用済み核燃料が再処理されるまで中間貯蔵する会社だそうです。
![]() |
![]() |
「所在地案内」より |
クリックすると大きな画像を表示します。
5年程度冷却した使用済み核燃料を乾式キャスクに入れ、下のような建物内で保管するつもりのようです。
建物は建設中で、2013年10月の営業開始を目指すとしています。
使用済み核燃料の再処理ができず、あと数年で使用済み核燃料の行き場がなくなって、原発は動かせなくなると言われています。
東電、日本原電はこの「中間貯蔵所」を作って、あくまでも原発・再処理を継続しようとしています。
使用済み核燃料など、放射性廃棄物をどこに置くか、これが大問題です。
学術会議は、お金をつぎ込んで「迷惑施設」を受け入れさせるという従来方式は適切でない、としています。
「迷惑施設」の危険性があまりにも大きいことが明らかになり、いくらお金を積まれても受け入れられないのです。
しかし、わざわざ地中から掘り出したウランを原子炉に入れ、中性子を浴びせて放射能を1億倍にまで増やしてしまったのです。
すでに作ってしまった放射性廃棄物は何とかしなければなりません。
危険性を最小限にとどめない限り、引き受ける場所は見つからないでしょう。
2013年も原発ゼロへ がんばろう!
13時半 西戸山公園(西武新宿線・JR・地下鉄東西線 高田馬場駅から徒歩7分)
14時 デモ開始
主催:反原発西武線沿線連合
毎週金曜! いますぐ原発ゼロに! 大飯原発を停止せよ! 首相官邸・国会議事堂周辺抗議
1月11日、18日、25日
午後6時~8時(予定)
首相官邸&国会議事堂周辺
国会議事堂前駅は大混雑が予想されます。
霞ヶ関駅、虎ノ門駅、桜田門駅をご利用ください。
主催:首都圏反原発連合
1月20日(日) 西尾正道氏講演会 -放射線の人体への影響-甲状腺異常など内部被曝を中心に
午後1時半~5時
中央大学駿河台記念館610号室
千代田区神田駿河台3-11-5
JR中央・総武線 御茶ノ水駅下車、徒歩3分
東京メトロ丸ノ内線 御茶ノ水駅下車、徒歩6分
東京メトロ千代田線 新御茶ノ水駅下車(B1出口)、徒歩3分
都営地下鉄新宿線 小川町駅下車(B5出口)、徒歩5分
資料代:1000円
参加人数把握のため、ご参加希望の方はファクス(03-5368-2736)かメール(kokumin-kaigi.syd.odn.ne.jp)でご連絡下さい。
主催:NPO法人 ダイオキシン・環境ホルモン対策国民会議
1月22日(火) 経団連会館前抗議
午後6時~8時
丸の内線・東西線・千代田線・半蔵門線 大手町駅 c2b出口直結
主催:首都圏反原発連合
| 固定リンク
この記事へのコメントは終了しました。
コメント