原発の近くはがん・白血病が多い 内部被曝は想定外の危険性!
ドイツでは、政府が委託した調査により、原発の近くに住んでいることが子どものがん・白血病の原因になっていることが明らかになり、政府もこの結果を認めています。
どうやって調べたのでしょうか。
この研究では「症例対照研究」というやり方が使われています。
これはあまりなじみのない方法なので、まず、サリドマイドによる奇形(アザラシ肢症)を明らかにしたレンツ博士の例を紹介します。
<症例> アザラシ肢症児を 生んだ母親 |
<対照> アザラシ肢症児を 生んでいない母親 |
計 | |||
人数 | % | 人数 | % | 人数 | |
サリドマイ服用 | 90人 | 80.4 | 2人 | 1.1 | 92人 |
サリドマイ非服用 | 22人 | 19.6 | 186人 | 98.9 | 208人 |
計 | 112人 | 100 | 188人 | 100 | 300人 |
上の表は、アザラシ肢症の子を産んだ母親112人に質問し、過去にサリドマイドを服用した過去があるかをを調査し、そののちアザラシ肢症でない出産をした母親188人に同様な質問をして作成した表です。
アザラシ肢症の子を産んでいない母親のうち、サリドマイドを飲んでいたのは1.1%ですが、アザラシ肢症の子を産んだ母親の80.4%がサリドマイドを飲んでいました。
アザラシ肢症の子を産んでいない母親はサリドマイドをほとんど飲んでいないが、アザラシ肢症の子を産んだ母親の多くは飲んでいました。
このことから、サリドマイドがアザラシ肢症の原因と分かります。
この「症例対照研究」は、小児がんのように非常に発生率の低い病気の原因を調査する場合に、特に有効です。
まず、ドイツで長期間運転されていた16基の原発を選びました。
下の地図の青丸がその一部を示しています。
地図の太い黒線が州境、薄い線が郡境です。
Spix C et al. Eur J Cancer 2008 ; 44: 275-284 より
ドイツでは西風が多いので、その原発がある郡と、すぐ隣の郡、その東側の郡を調査地区(地図の薄い青色の範囲)に選びます。
ドイツでは1980年から子どものがん登録が実施されているので、1980年から2003年の間に、調査地区でがんと診断された5歳未満の子ども1,592人をリストアップします。
その一つ一つの症例について、誕生日、年齢、性、調査地区を一致させた健常者(対照)を選びます。
1,592人のがん児童と4,735人の健康児(対照)とについて、原発からの近さに違いがあるかどうかを調べた結果が下の表です。
原発からの距離 | がん児童 | 健康児 | ||
人数 | % | 人数 | % | |
<5キロ | 77 | 4.8 | 148 | 3.1 |
≧5キロ | 1,515 | 95.2 | 4,587 | 96.9 |
合計 | 1,592 | 100 | 4,735 | 100 |
健康児では原発の排気塔から5キロ未満に住んでいたのは3.1%でしたが、がん児童では4.8%と、多くなっています。
がん児童は健康児に比べて、原発の近くに住んでいる場合が多い。
これは、原発に近いことが発がんの原因になっていることを示しています。
1,592人のがんの内訳は上のグラフのように、白血病と胎児性がんで3分の2をしめています。
がんの内訳毎に原発からの距離の影響を調べると、下のグラフのようになります。
上に*がついているもの、つまり、がん、白血病、急性リンパ性白血病、急性非リンパ性白血病(5キロ内外)については、統計的に差があり、原発に近いことが病気の原因になっています。
ドイツ政府は「この研究は、5歳未満児では原発から自宅までの距離と、がん(特に白血病)になる危険性との間に関係があることを確認している」と述べています(Fairlie I. Environmental Health 2009; 8:43)。
事故がなくても、通常運転時でも、原発の近くではがん、特に白血病になりやすいのです。
上のグラフは、原発近くの白血病発生率を調べた世界中の論文を集め、統計的に統合できる17の施設を調査した結果を使って分析したものです。
「0~9歳」のグループでも、「0~25歳」のグループでも、原発に近い方が白血病が増えています。
原発の近くで子どものがん、特に白血病が増える原因として、真っ先に考えられるのは、原発から出される気体の放射性物質です。
最初に述べたドイツの研究では、特定の原発周辺で白血病が増えているということはありませんでした。
通常運転時に原発から出される気体の放射能は極めて低レベルとされています。
例えば、1991年にドイツの原発から5キロの地点に住んでいる50歳の人が原発の気体廃棄物から受ける放射能は0.0019~0.32マイクロシーベルトとされています(Spix C. et al. Eur J Cancer 2008;44:275-284)。
もっと高く、年間0.1~10マイクロシーベルトという試算もあります(Fairlie I. Environmental Health 2009; 8:43)。
どちらにしても、これらが本当なら、白血病が2倍になるということはあり得ないでしょう。
画像をクリックすると、大きな画像を見られます。
カナダの原発から、かなりの放射性水素(三重水素またはトリウムとも言う)が放出されていることが分かります。
カナダの原発は中性子減速材・冷却材として重水を使っています。
重水の水素が中性子を1つ吸収すると放射性水素になるので、カナダの原発は放射性水素を放出しやすいとされています。
左からそれぞれ水素、重水素、三重水素。図中の赤い丸は陽子を、黒い丸は中性子を、そして青い丸は電子を表している。 |
日本の原発でも水の水素が中性子を2つ吸収すると放射性水素になり、水蒸気の形で放射性水素が放出されます。
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原発から水蒸気として放出された放射性水素は、上のグラフのように、草木や野菜、肉などに吸収されます。
原発の近くに住んでいる人も放射性水素を吸収し、内部被曝することになります。
上のグラフはドイツのネッカーヴェストハイム原発2号機から放出される炭素14の放出量を四半期毎に示しています。
ほぼ1年に1回多量に放出されているのは、定期点検で燃料を交換する時に炭酸ガスになった炭素14が放出されるということです。
放射性水素も水蒸気として、同時に放出されているでしょう。
なお、原発で使われる核燃料の中に含まれている窒素が、中性子を吸収すると炭素14と水素に変わります。
現在普通に行われているICRP(国際放射線防護委員会)方式の計算では、体内に取り込まれた放射能のベクレル数に係数を掛けてマイクロシーベルトに換算し、外部被曝に比べて小さいから安全だ、などと言っています。
これは非常に危険です。
すでに述べたように、原発の通常運転時に大気中に放出される放射能は、せいぜい年間0.1~10マイクロシーベルトとされています。
他方、5歳未満の子どもが原発から5キロ以内に住んでいると、5キロ以遠に住んでいるより約2倍、白血病になりやすい。
ということは、自然放射線による被曝を1ミリシーベルトとすると、5キロ以内では1ミリシーベルトの内部被曝を余分に受けている(合計2ミリシーベルト)、ということです。
1ミリシーベルトは1,000マイクロシーベルトです。
実際の内部被曝は、ICRP方式で計算した線量の100~10,000倍ということです。
胎児の造血組織は特に放射線感受性が高いという説(Fairlie I. Environmental Health 2009; 8:43)もあります。
内部被曝を軽視せず、できるだけ避ける、正しい対処が必要です。
9月28日(金) 大飯原発を停止せよ!首相官邸前抗議
【重要なおしらせ】
・首都圏反原発連合は、9月19日にも発足すると言われている原子力規制委員会と、次の衆議院選挙を視野に入れ、9月中も引き続き毎週金曜の抗議を実施します。
9月を強化月間として、人事案の撤回を求め、政党、政治家の脱原発についての動向を見極め、さらに抗議の声を拡大していきましょう!
・ 合同庁舎第4号館前に原子力規制庁準備室に対する人事案反対抗議エリアを設置します。
【日時】9/281(金)18:00~20:00 予定
【場所】首相官邸前および永田町・霞が関一帯
(霞ヶ関駅、虎ノ門駅、桜田門駅をご利用ください)
※千代田線・丸ノ内線の国会議事堂前駅は大混雑が予想されます。
【呼びかけ】首都圏反原発連合
9月30日(日) 反原発デモ@渋谷・原宿(第13回目のTwitterデモ
15時集合 16時出発 予定
集合場所:渋谷・宮下公園
主催:TwitNoNukes
11月11日(日) 反原発1000000人大占拠
国会・官邸・永田町・霞ヶ関へ向けた反原発巨大デモの後、政治の中枢一帯を一大占拠し、大抗議行動を開催。
11月11日(日)午後
主催:首都圏反原発連合
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