« 2012年1月 | トップページ | 2012年3月 »

2012年2月

野菜の放射能(セシウム)汚染は大丈夫? 内部被曝をできるだけ減らそう

 最近、野菜の放射能汚染が取り沙汰されることは少なくなったが、毎日食べる物だけに、どの程度汚染されているのか、チェックしてみました。

原発事故直後の汚染は、空気中から吸い込んだ放射能による

Photo_2  

画像をクリックすると大きい画像を表示します(以下、同様)。
福島県ホームページより、改変

 田村市は福島第一原発の地元=大熊町のすぐ西に位置しています。

Photo_3

ほうれん草の測定値は厚労省ホームページ(平成24年1月 Excel版)より

空間線量は福島県ホームページ(20キロメートル~50キロメートル圏付近環境放射能測定結果)より

 3月18日をピークに田村市に放射性物質の雲のような塊が押し寄せ、ほうれん草が空中の放射性セシウム(セシウム134+セシウム137)を吸収したものと思われます。

 4月以降は放射性物質が雨で地上に落下し、空間線量は徐々にしか低下していませんが、ほうれん草の放射性セシウムは急激に減少し、5月18日、25日には検出限界未満となっています。

 これは落下した放射性セシウムが土に吸着され、ほうれん草にはほとんど吸収されていないことを示しています。

お茶のセシウム汚染は「想定内」?

Photo_5  福島第一原発から約300キロ離れた静岡県のお茶が放射性セシウムに汚染されていたことは、「想定外」とされました。

 Photo_2

田村市の空間線量は福島県ホームページ(20キロメートル~50キロメートル圏付近環境放射能測定結果)、静岡市の空間線量は静岡県ホームページより

 しかし上のグラフのように、例えば静岡市にも3月15日、21~22日に放射能の雲のような塊は到達していました。

 当然、静岡のお茶も汚染される可能性がありました。

 放射線量を福島県田村市と比較してみましょう。

 上のグラフで原発事故前の空間線量を0.03マイクロシーベルト/時として、それ以上の線量の面積を比べると、静岡市は田村市の10分の1くらいでしょうか。

 グラフの縦軸が静岡市の場合は田村市の14分の1なので、線量は1/10×1/14で140分の1くらいでしょうか。

 お茶は常緑樹ですから、3月22日に収穫された田村市のほうれん草と同じように、到達した放射性セシウムを吸収するでしょう。

 到達した放射線量が140分の1なので、吸収量も140分の1と仮定すると、40,000ベクレル/kg の140分の1=286ベクレル/kgとなります。

 実際に静岡市のお茶の生葉から検出された放射性セシウムは、117~139ベクレル/kg でしたから、推定値の約半分です。

 セシウム汚染は「想定内」であり、何の対策も取っていなかったとしたら、怠慢のそしりを免れないでしょう。

 お茶の防除暦によると、3月中下旬にハダニ防除の農薬をまくことになっています。

 しかも、お茶の場合、普通に農薬をまいても雨が降ると流れてしまうので、「粘着剤」とか「貼着剤」と呼ばれる薬剤を農薬に混ぜて、農薬が流れないよう、葉に貼り付けるそうです(「野菜の裏側」河名英郎著、東洋経済新報社刊)。

 ちょうど放射性物質の雲のような塊が静岡県をおそった頃に、貼着剤入りの農薬をまき、セシウム汚染を促進していたのかも知れません。

汚染米は水に溶けたセシウムを吸収

 野菜と違って、福島産のコメの中には500ベクレル/kgを超える高濃度汚染されたものが各地で検出されました。

 東大の根本圭介教授ら(農学生命科学研究科)の研究によると、イネは水田の水に溶けた放射性セシウムを吸収したため、高濃度汚染されたと考えられます(東京新聞2月19日朝刊2面)。

 10ベクレル/リットルのセシウムを含む水で育てたイネから、5,700ベクレル/kgのセシウムが検出されたそうです。

 10ベクレル/リットルでも、セシウムの濃度としてはわずか0.0000000000003%、10兆分の3%に過ぎません。

 ほんのちょっとでも放射性セシウムが水に溶ければ、高レベル汚染米ができてしまうのです。

土からの吸収は?

 現在、ほとんどの野菜が検出限界未満となっています。

 でも、検出限界って、何ベクレル?

 検出限界は各都道府県によって違っています。主に測定時間の違いによると思われます。

Photo

厚生労働省ホームページ(月別検査結果 平成24年1月)より、グラフ化

 これは各都道府県が地元の野菜を測定した結果です。

 グラフの縦棒1本が一つの測定値の検出限界を表しています。

 群馬県、埼玉県、千葉県、長野県は40ベクレル/kgと高く、茨城県は10ベクレル前後、栃木県、新潟県、宮城県ではほぼ10ベクレル以下です。

Photo_2

厚生労働省ホームページ(月別検査結果 平成24年1月)より、グラフ化

 このグラフは都道府県が市場で買った他県の野菜を測定した結果です。

 例えば一番左の紺棒は大阪府がほうれん草を測定した結果です。 

 東京都や長野県などの例外もありますが、他県産の野菜を検査する場合は検出限界を下げて、念入りに検査する場合が多いようです。

 10ベクレル以下が大部分です。

 上のグラフを産地別に見てみましょう。
Photo_3

厚生労働省ホームページ(月別検査結果 平成24年1月)より、グラフ化

 茨城県のほうれん草3件は、検出限界10ベクレル程度で測定して検出限界以下でした。

 群馬県のほうれん草6件のうち4件は10ベクレル未満、うち2件は5ベクレル未満です。

 埼玉県の2件も10ベクレル未満。

 東京都清瀬市産は2ベクレル未満でした。

 栃木県、新潟県、宮城県は、先にあげた自県検査でほぼ10ベクレル未満です。

 福島県産の1月のほうれん草については検出限界10ベクレル未満の検査結果がありません。

 以上の結果から見ると、土に吸着されたセシウムが野菜に吸収されることは少ないようです。

<ご注意!> 検出限界10ベクレル/kg 以下で測定した結果、土からの汚染が検出されています。詳しくは「緊急警告:野菜のセシウム汚染にご注意!」を参照してください。

セシウムは粘土に固定される

Photo_6

 東京大学の小暮敏博准教授ら(理学系研究科)によると、粘土に取り込まれたセシウム原子(図の)は周囲を6個の酸素原子()に囲まれ、しかも右側の図にあるように、両側から計12個の酸素原子に囲まれ、固定されているそうです(「サイエンスゼロ」 2012年2月18日、NHKEテレ)。

多年生植物にご注意!

  栃木県が1~2月に測定した野菜類の測定結果は以下のようです。

栃木県 放射性セシウム
      (ベクレル/kg)
アスパラガス <4
イチゴ <20
カキナ <6
シュンギク <5
トマト <4
ニラ <5
ネギ <5
フキノトウ <26
ホウレンソウ <6
レタス <4
わらび 4.2
山ウド 7.4
軟化ウド <4
木の芽(山椒) 74.2

 4~5ベクレル程度の検出限界よりも低いものが多い中で、那須町でハウス栽培された山椒の木の芽(若葉)から、71.2ベクレル/kg の放射性セシウムが検出されています。

 昨年の原発事故当時に放射性セシウムを吸収した山椒が若葉を出せば、今年の若葉でも汚染されているでしょう。

 ウドは多年生、ワラビも多年生で根茎で増えるので、昨年吸収したセシウムで汚染されたものと思われます。

 汚染されていないタネから今年育てられる野菜なら、汚染はかなり低レベルにとどまるかも知れません。

 昨年から生育していた多年生植物、果樹、「野菜」ではないけれどキノコ類などは要注意です。

(アース)

| | コメント (3) | トラックバック (0)

« 2012年1月 | トップページ | 2012年3月 »