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原発なくても電気は足りる 「他社受電」=「埋蔵電力」を隠した「電力危機」演出をやめよ

 東日本大震災と福島原発事故の影響で37基の原発が止まり、「電力危機」が叫ばれている。

 「原発を減らすのはいいが、今すぐやめたら電力が足りなくなる」と言う人もいる。 

 原発が止まると、本当に電気は足りないのだろうか?

火力と水力だけで足りる

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図1 「電気事業便覧 平成22年度版」、電力統計表一覧より作成
2012年度版にアップデート済み

 上のグラフは2000年度以降、火力発電と水力発電の最大出力を足すと、8月の最大電力(3日平均)を上回っていることを示している。

 猛暑だった2010年度でも、ほんのちょっと節電すれば、火力と水力だけで足りていたのだ。

 原発がなくても、電力は足りるのだ。

 原発の電気は全体の25%を占めているのに、なぜ、なくても大丈夫なのか?

 これには2つの要因がある。

 第1に、発電設備に余裕がなければ25%もなくなったら大変だが、実際には非常に余裕があるから、だ。


火力発電は遊ばせている

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図2 小出裕章著「隠される原子力・核の真実」106頁の図を2009年度にアップデート

 例えば火力発電の場合、年間フルに運転すると約125億kW発電できるが、実際には約57億kWしか発電していない。設備利用率は46%で、半分以上は遊んでいる。

 これはどういうわけか。

 原発は出力調整がむつかしい上に、今回のように事故を起こすと一斉に止めなければならない。

 原発の予備として、普段は使わない火力発電を用意しておかないと、原発を運転できないのだ。

 原発を全部とめても、原発で発電していた分は、遊ばせていた火力発電でまかなって、なお余裕がある(上のグラフ参照)。

 もう一つの要因は、「他社受電」である。

 以下、東電について見てみよう。

「他社受電」とは

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 東電は毎年、1,000万kW以上の電力を「他社」から買っている(平均1,158万kW)。 

 電気が足りなければ、遊ばせている自社の火力発電で発電すれば良さそうだが、「他社」から買っている。

Photo
東電資料より作成

 東電の電力の内、14%(2009年度)、約7分の1が「他社受電」である。

 自社の設備を遊ばせてまで、なぜ「他社」から買うのか?

 地域独占の電力会社はコストが高いからだ。

 テレビ朝日の「ワイド・スクランブル」によれば、電気の小売業者「エネット」の電気料金は、東電より2~3割安いという。

 発送電分離、電力の自由化が必要だ。

電気事業者と自家発電から受電

 「他社」の可能性があるのは、以下の電気事業者と、自家発電している企業だろう。

表1 東電に送電している可能性のある会社(一部)
  会社名 種類 発電所の場所 最大出力 
      万kW
東電への販売 
      100万kWh 
      2009年度
電気事業者 電源開発
      (J-Power)
水力 静岡県佐久間町など 856 7,857
火力 横浜市など 841
地熱 宮城県鳴子温泉 1.5
原子力発電(株) 原子力 東海第2、敦賀発電所 262 2,570
栃木県 水力 栃木県内各地 9.7  
常磐共同火力 火力 福島県いわき市 163 約5,000
相馬共同火力 福島県新地町 200  
東京発電 水力 埼玉県秩父市など 18.3  
鹿島共同火力 火力 茨城県鹿嶋市 105  
君津共同火力 千葉県君津市 74.3 電力の半分を東電に送電
東日本旅客鉄道 川崎 65.5  
水力 信濃川 44.9
六本木エネルギーサービス 火力 港区六本木ヒルズ 3.9
自家発電 群馬県 火力 群馬県高浜 2.5
荏原製作所 神奈川県藤沢工場第2 6.4
JFEスチール 川鉄千葉 38.1
東京ガス 横須賀、横浜 24.9
新日本石油精製 横浜 4.9
昭和電工 川崎 12.4
トーメンパワー寒川 神奈川県 6.6
日立造船 茨城県 21.2
日立製作所 茨城県 18.9
ジェネックス 神奈川県 23.8
合 計   2,804.8  
「電気事業便覧 平成22年度版」および各社ホームページより作成

 以上を合計すると、2,800万kW以上に及んでいる。

 この「他社受電」が、すなわち「埋蔵電力」である。

 図2にあるように、自家発電の半分は遊んでいて、電力会社に回す余裕がある。

 「AERA」7月18日号によると、群馬県企業局は上の表にある火力の他、水力中心に24.6万kWを東電に送電。

 日本製紙、三井化学、東京23区清掃一部事務組合なども送電しているという。


「他社受電」を過少申告して「危機」を演出

 東日本大地震をへた今年の、東電管内の電力はどうなるのか。

電力供給力 万kW
内  訳 東電 7月1日 東電 テレビ朝日
      7月
筆者試算 内  訳
7月末 8月末
水力 310 310 水力
揚水発電 650 650 揚水発電
原子力 490 490 原子力
火力 3,560 3,560 火力
ガスタービン新設 80 80 ガスタービン新設
応援融通 40 40 応援融通
卸電気事業者から 480 1,158 他社受電
自家発電から 70
合計 5,680 5,560 5,680 6,288 合計
 

 東電発表によると、この夏の最大需要は5,500万kW。

 これに対し、7月末の供給力は5,680万kW、8月末は5,560万kWとなっている。

 その内訳は7月7日にテレビ朝日で放映された「モーニングバード」でようやく明らかにされた(上の表、中央の欄)。

 何と、「他社受電」は、(他の電力会社からの)応援融通、卸電気事業者( 表1の電源開発など)、自家発電を合わせて、わずか590万kWしか、予定されていない。

 図3から分かるように、東電はこれまで平均でも1,158万kWもの電力を「他社」から買っている。

 例年通りに「他社受電」すれば、上の表にあるように、6,288万kWも供給できる。

 東電は「他社受電」を過少申告して「15%節電」を強要したのだ。

 「電力危機」を心配する必要は、まったくない。 

 それどころか、猛暑だった去年でも、最大需要は5,999万kWだった。

 節電しなくても、去年の最大需要を4.8%も上回っている。

 ちなみに、7月13日、東電は東北電力に140万kWを融通したいと発表している。

 電力は余っているわけだ。

原発を全部とめても8%節電でオーケー

 試算した供給力6,288万kWには、柏崎刈羽原発の490万kWが入っている。

 これを全部止めても、5,798万kW。

 東電が想定している5,500万kWの需要を軽く上回る。

 さらに、昨年並みの猛暑を想定しても、8%節電すれば需要は5,519万kW。

 5%の余裕を見ても、必要なのは5,795万Kw。

 東電の原発を全部止め、去年並の猛暑でも、8%節電すれば電力に余裕があるのだ。

 福島原発事故でまき散らされた放射能は、周辺住民の生活を根底から破壊し、故郷を奪い、静岡県のお茶生産農家や高知県の食肉販売業者の生活まで脅かしている。

 原発はいつ事故を起こすか分からない。

 運転すればするほど、捨てる場所もない放射性廃棄物が大量に生産される。

 すべての原発を直ちに停止すべきである。

(アース)

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コメント

暑いけど 電気予報にゃ 余裕あり

東電の 「電気足りない」 嘘ばかり

投稿: アース | 2011年8月12日 (金) 23時34分

この暑さ 電気予報で なお暑い 

下請け電気予報官 

投稿: 電気予報官 | 2011年8月12日 (金) 12時57分

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