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2011年6月

脱原発を目指して 風力発電を阻む「抽選の壁」と「発送電一体」

日本の風力発電は遅れている
   

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 ドイツのデータは「再生可能エネルギー普及に関するドイツの経験」、日本のデータは「電気事業便覧」および「財団法人 新エネルギー財団」資料による。

 日本の風力発電の普及は、ドイツより11~12年遅れている。

 ドイツは11年前、「電力供給法」を制定して「全量固定価格買取制度」を導入し、再生可能エネルギーを大幅に普及させた。

 日本では、ようやく今の国会に「全量固定価格買取」の法案が上程された段階である。

 日本の現状はどうか?

抽選の壁

 太陽光発電については、2009年11月から、使い切れなかった「余剰分」を電力会社が買い取るよう義務づけられた。

 しかし風力発電については、2003年に施行された「RPS法(電気事業者による新エネルギー等の利用に関する特別措置法)」があるだけだ。

 「RPS法」では、電力会社は売る電力の「一定割合」を「(風力発電など)新エネルギーによる電気でまかなう必要がある。

 つまり、電力会社は自分で風力発電をすればそれでいいし、他の企業などが風力で発電しても必ずしも買い取る必要はない。

 かくして風力発電の「抽選」なるものが行われることとなっているのだ。

 6月28日の朝日新聞朝刊3面によると、現状を要約すると、以下の通り。

 

 


参入に抽選 10年当たらず

 昨年末、東北電力の抽選会。募集枠は約26万キロワット分。

 ここに風力発電事業者や地元の建設会社、市民団体など約100件(計約257万キロワット分)が応募した。

 5件が「当選」だったという。

 この「抽選会で、複数件を応募したある事業者はすべて外れた。環境影響評価や測量で、1億円ほどを投じていた。

 「それが抽選で決まるなんて産業としておかしいでしょ」と憤る。

 くじ運が良かったとしても次の関門が待ち受ける。

 当選して初めて、電力会社から電気を送電線に送るための具体的な条件が示される。

 予定していなかった数億円の送電線や電圧安定設備の設置を求められることも。

 追加の負担に耐えられず、辞退に追い込まれる事業者も少なくない。

 なぜ、もっと風力発電を受け入れないのか?

 「できないわけではない。やりたくないからしないだけだ」。

 ある電力会社の元幹部は言い切る。

 「原子力という安定した電源があるのだから、あてにならない電気を買う必要はない」 
 

 

 発送電一体の壁

 朝日新聞の記事はもう一つの壁も指摘している。


足りない送電線


 日本の電力システムは「大規模・集中型」で、原発などの発電所からは太い送電線が延びるが、需要の少ない場所ほど細くなる。

 北海道・宗谷岬周辺では日本有数の風が吹くのに、地元で使う電気が少ないため送電線が細く、新規の風力発電を受け付けていない。

 自然エネルギーを増やしたくても、そこへ送電線を延ばすかは、現実は電力会社の判断に委ねられている。

 「自然エネルギーのために送電線を引く経済的な動機づけは電力会社にはない」と関係者は明かす。

 北海道から新潟に至る海岸線で風を拾い、首都圏に電気を届ける。そんな夢を抱く風力事業者は「高速道路のように、送電線を公共インフラとして整備できないか」と思う。

発送電分離


 「大規模・集中型」の電力システムが効率がいいとして、電力会社の地域独占が特別に認められてきた。その代わり、電気料金の設定などで政府が口出しできる仕組みが取られてきた。

 しかし技術が進み、小規模でも効率よく電気を供給する方法が生まれた。

 そこで送電と発電の部門を分け、発電事業の新規参入を認めて競わせれば電気料金を下げられるという考え方が出てきた。

 ほぼすべての先進国と、中国やインドなどはすでに採用している。

 欧州では、多くの国で送電会社が国有化されるなどして送電網の公共性が重視された。

 結果として、政府が決めた自然エネルギーの普及策が反映されやすくなった。

 地域独占が認められた電力会社には、どの国でも権益が生まれがちだ。

 海外で発送電分離が進んだ背景には、そうした電力会社の力を弱めようという政治的な思惑があったことも指摘されている。

 株主総会の様子を見ても、東電は旧態依然。改革の姿勢は見られない。

 今こそ、政治の出番だ。

 再生可能エネルギー促進法を成立させ、送電線を電力会社の手から取り戻さなければならない。

(アース)
 

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菅おろし、狙いは脱原発つぶし?! 再生可能エネルギーをふやそう!

「原発減らそう」が圧倒的

 朝日新聞社が6月11、12日に行った全国世論調査によると、「原子力発電を段階的に減らして将来はやめる」ことに74%が賛成と答えたという(2011年6月14日 朝日新聞朝刊 1面)。

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 東京新聞の調査では、上のグラフのように、「直ちにすべて廃炉」、「定期検査に入ったものから廃炉」、「電力需給に応じて廃炉を進める」と、廃炉を求める人が計82%に達している(東京新聞 6月19日 朝刊1面)。

 民主党政権は原発を推進してきたが、菅首相は福島第1原発の事故を受けて、原発増設をうたう「エネルギー計画」の見直し、自然エネルギー推進を打ち出した。

 さらに踏み込んで、浜岡原発停止を要請し、「発送電分離の検討」まで打ち出した菅首相に対し、突如として菅おろしの嵐が吹き荒れた。

「浜岡停止」に猛圧力

 最近、菅首相は周辺にこう漏らしているという(6月18日 朝日新聞朝刊 4面)。

 「これまで多くの非難や中傷を受けてきたが、浜岡原発の運転停止を求めて以降の私に対する攻撃は、経験したことのない異常な激しさだ」

 菅首相に猛烈な圧力がかかるのは、一連の動きが東電をはじめとする電力会社の権益を侵すからではなかろうか。

 電力会社は地域独占で競争相手がなく、経費の3.5%が「適正報酬」として保証されている。

 コストをかければかけるほど、利益が大きくなる仕組みだ。

 コストの高い原発は、電力会社にとっては「金のなる木」。

 原発を減らそうという動きは、電力会社にとってはとても許せないだろう。 

再生可能エネルギーにブレーキ

 電力会社は電力を売るのが商売だ。

 六本木ヒルズが地下の設備で自家発電したり、企業が風力発電を始めたり、「消費者」が自ら太陽光発電したりすると、電力会社は困ったことになる。

 地球温暖化が大問題になってからも、送電網を握る電力会社は「電力供給が不安定になる」などと称して再生可能エネルギーによる電力受け入れを制限してきた。

 風車を立てようとしても、送電できるかどうかは抽選次第。

 これじゃあ、風力発電で商売はできない。

 太陽光発電による電力は買い取っているが、家庭などで使い切れずに余った電力を買い取っているだけ(余剰電力買取)。

「再生可能エネルギー促進法案」は審議入りさえ妨害

 3月11日、東日本大震災当日の午前中に、「再生可能エネルギー促進法案(電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法案)」が閣議決定された。

 現在は太陽光で発電し使い切れずに余った電力を買い取っているだけだが、

 (1) 太陽光発電に限らず、風力、中小水力、地熱、バイオマス発電が対象

 (2) 使い切れずに余った電力だけでなく、発電した電力全量を買い取る

のが、「全量固定価格買取制度」と言われる、大きな変化だ。

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  ドイツは1990年の「電力供給法」で「全量固定価格買取制度」を導入し、再生可能エネルギーを大幅に普及させた。

 1990年から2004年までの14年間に風力発電は346倍、太陽光発電は354倍となっている(上のグラフには示していないが、1990年頃、再生可能エネルギーの大部分は水力発電だった)

 全量を長期にわたって固定価格で買い取ることが保証されるので、コスト回収の目途がつき、発電しやすくなる。

 太陽光パネルも普及するにつれて急速に安くなり、ますます普及しやすくなる。

 2009年時点で少なくとも50以上の国々と25以上の州・地域で採用され、再生可能エネルギーの普及政策として、最も一般的な手法とされている。

 電力会社が買い取るための費用は電気料金に上乗せされる。その額は家庭で月150~200円程度とされている(2011年6月22日「朝日新聞」朝刊4面)。

 原発に頼らずに地球温暖化を阻止するためには、やむを得ない負担ではなかろうか。

  「再生可能エネルギー促進法案」は国会に上程されたものの、経団連、自民党が電気料金の上昇を理由に反対、自民党の抵抗で審議にも入れなかった。

 菅首相の「粘り腰」でようやく日が当たってきた。

 今国会でぜひ成立させるべきだろう。

原発を再起動させるな!

 6月18日、海江田経産相は「原発の安全性を確認した」と称して、定期検査で停止中の原発の再起動を求めた。

 翌日、菅首相も支持を表明、原子力安全・保安院が立地自治体に圧力をかけている。

 こうした中、九州電力玄海2、3号機がある佐賀県の古川知事は突然、「26日に4、5人の県民代表が国の説明を聞く」と表明、再起動への地ならしではないかと報じられている(6月22日 東京新聞朝刊 24面)。

 福島第1原発事故の原因調査がようやく始まったばかりだというのに、なぜ「安全宣言」ができるのか!

 政府は「安全宣言」を撤回し、再起動をやめるべきである。

(アース)

追伸 参考になるものを載せておきます。

 作家・矢作俊彦氏のツイッター

 宮崎駿の菅首相へのメッセージ

 社会学者・小熊英二氏の発言

 

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流山・柏・我孫子から金町の辺りにホットスポットが  ―「放射能雲」の動きは早い!―

水戸より柏の方が放射能汚染されている

 福島第1原発の事故で大量の放射性物質が放出され、北西方向の浪江町赤宇木(あこうぎ)、飯舘村、福島市・伊達市などに放射線量の高い「ホットスポット」ができている。

 「ホットスポット」は北西方向だけではない。南西方向、首都圏の一部にも「ホットスポット」が生じている。

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地上1メートルで測定した放射線・原子力教育関係者有志による全国環境放射線モニタリングのデータ(5月25~28日測定 いわき市勿来町は16日)を筆者が画像化した。
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 不思議なことに、福島第1原発に近い いわき市勿来町や、水戸市よりも、約200キロも離れた流山市・柏市・我孫子市や、約211キロも離れた葛飾区金町の方が、はるかに放射線値が高いのだ。

 なぜ、こういうことになったのか?

雨が降らなかった水戸市は低濃度汚染

 

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 水戸市の放射線量は3月15日朝7時半頃、急上昇した。

 福島第1原発から大量に放出された放射性物質の一団が、「放射能雲」のように風に乗って水戸市の上空を通過していったのだ。

 「放射能雲」が通過すると、放射線量は毎時0.16マイクロシーベルト前後までさがった。

 3月16日、20日に続いて21日、早朝5時頃、またもや「放射能雲」が水戸市上空を通過した。

 その終わり頃に雨が降り始め、上空に残っていた一部の放射性物質が地上に降り注いだ。

 放射線量は毎時約0.3マイクロシーベルトとなった。

柏市は雨でホットスポットに
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 柏市の放射線量のグラフは、水戸市のものとはまったく違っている。

 柏市では3月21日9時頃、「放射能雲」が来ると同時に雨が降り出した。

 大量の放射性物質が地上に降り注ぎ、「放射能雲」が通過した後も、地上にたまった放射性物質から、毎時約0.7マイクロシーベルトの放射線が発せられることとなった。

 水戸市と柏市の放射能汚染の違いは、「放射能雲」が来ている時に雨が集中して降ったかどうかによるのだ。

 柏市の隣の流山市、我孫子市、松戸市、そして松戸市のとなりの、葛飾区金町も、同様にして「ホットスポット」になったのだろう。
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「放射能雲」が流れていく

 水戸市の近く、東海村には東海第2原発や三菱原子燃料株式会社の燃料棒製造工場がある。

 このため、北は日立市、常陸太田市、常陸大宮市から、南は鉾田市までの間に計41ヶ所のモニタリングポストが置かれ、10分毎の放射線測定値が公表されている。

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 41のモニタリングポストのうち、上図の赤線で囲んだ8ヶ所について、3月21日早朝の放射線量の変化を見てみよう。

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 日立市大沼の放射線量は4時20分にピークに達し、以後は減少している。放射線量のピークは東海村豊岡(4時30分)、ひたちなか市阿字ヶ浦(4 時40分)、同市柳沢(5時)、大洗町大貫(5時10分)、鉾田市荒地(5時20分)、同市樅山(5時30分)、同市徳宿(5時40分)へ、モニタリング ポストの配置どおりに、北から南へと移動している。

 福島第1原発から放出された放射性物質が雲のようになって、日立市から鉾田市へと風に乗って流れていったのだ。

「放射性雲」の動きは速い! 万一の時は即座に行動を!

 「放射能雲」は大沼から徳宿まで、約39キロを80分で移動している。

 時速29キロ。

 当時、水戸市の地上では秒速2.6メートル(=時速9.4キロ)の北東の風が吹いていた。

 放射性物質は地上の風速の約3倍の速度で上空を動いていたのだ。

 今後、万一、福島第1原発から大量の放射性物質が放出された場合、風速から計算するよりはるかに早く放射性物質が飛んでくると考えなければならない。

 例えば東京は、福島第1原発から約227キロ。秒速2.6メートル(=時速9.4キロ)の風が東京に到達するには24時間かかる。

 しかし、時速29キロの上空の風なら、約8時間で到達してしまう。

 いざという時は、すぐに行動しなければならない。

(アース)

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