脱原発を目指して 風力発電を阻む「抽選の壁」と「発送電一体」
日本の風力発電の普及は、ドイツより11~12年遅れている。
ドイツは11年前、「電力供給法」を制定して「全量固定価格買取制度」を導入し、再生可能エネルギーを大幅に普及させた。
日本では、ようやく今の国会に「全量固定価格買取」の法案が上程された段階である。
日本の現状はどうか?
太陽光発電については、2009年11月から、使い切れなかった「余剰分」を電力会社が買い取るよう義務づけられた。
しかし風力発電については、2003年に施行された「RPS法(電気事業者による新エネルギー等の利用に関する特別措置法)」があるだけだ。
「RPS法」では、電力会社は売る電力の「一定割合」を「(風力発電など)新エネルギーによる電気でまかなう必要がある。
つまり、電力会社は自分で風力発電をすればそれでいいし、他の企業などが風力で発電しても必ずしも買い取る必要はない。
かくして風力発電の「抽選」なるものが行われることとなっているのだ。
6月28日の朝日新聞朝刊3面によると、現状を要約すると、以下の通り。
参入に抽選 10年当たらず 昨年末、東北電力の抽選会。募集枠は約26万キロワット分。 ここに風力発電事業者や地元の建設会社、市民団体など約100件(計約257万キロワット分)が応募した。 5件が「当選」だったという。 この「抽選会で、複数件を応募したある事業者はすべて外れた。環境影響評価や測量で、1億円ほどを投じていた。 「それが抽選で決まるなんて産業としておかしいでしょ」と憤る。 くじ運が良かったとしても次の関門が待ち受ける。 当選して初めて、電力会社から電気を送電線に送るための具体的な条件が示される。 予定していなかった数億円の送電線や電圧安定設備の設置を求められることも。 追加の負担に耐えられず、辞退に追い込まれる事業者も少なくない。 なぜ、もっと風力発電を受け入れないのか? 「できないわけではない。やりたくないからしないだけだ」。 ある電力会社の元幹部は言い切る。 「原子力という安定した電源があるのだから、あてにならない電気を買う必要はない」 |
朝日新聞の記事はもう一つの壁も指摘している。
足りない送電線 日本の電力システムは「大規模・集中型」で、原発などの発電所からは太い送電線が延びるが、需要の少ない場所ほど細くなる。 北海道・宗谷岬周辺では日本有数の風が吹くのに、地元で使う電気が少ないため送電線が細く、新規の風力発電を受け付けていない。 自然エネルギーを増やしたくても、そこへ送電線を延ばすかは、現実は電力会社の判断に委ねられている。 「自然エネルギーのために送電線を引く経済的な動機づけは電力会社にはない」と関係者は明かす。 北海道から新潟に至る海岸線で風を拾い、首都圏に電気を届ける。そんな夢を抱く風力事業者は「高速道路のように、送電線を公共インフラとして整備できないか」と思う。 発送電分離
「大規模・集中型」の電力システムが効率がいいとして、電力会社の地域独占が特別に認められてきた。その代わり、電気料金の設定などで政府が口出しできる仕組みが取られてきた。 しかし技術が進み、小規模でも効率よく電気を供給する方法が生まれた。 そこで送電と発電の部門を分け、発電事業の新規参入を認めて競わせれば電気料金を下げられるという考え方が出てきた。 ほぼすべての先進国と、中国やインドなどはすでに採用している。 欧州では、多くの国で送電会社が国有化されるなどして送電網の公共性が重視された。 結果として、政府が決めた自然エネルギーの普及策が反映されやすくなった。 地域独占が認められた電力会社には、どの国でも権益が生まれがちだ。 海外で発送電分離が進んだ背景には、そうした電力会社の力を弱めようという政治的な思惑があったことも指摘されている。 |
株主総会の様子を見ても、東電は旧態依然。改革の姿勢は見られない。
今こそ、政治の出番だ。
再生可能エネルギー促進法を成立させ、送電線を電力会社の手から取り戻さなければならない。
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