日本の送電網は10年遅れている!?
ワールドウオッチ研究所(米ワシントン)は毎年「地球白書」を発行し、地球環境の危機に早くから警鐘を鳴らしてきた。9月17日の朝日新聞夕刊に 「エネルギーの政権交代も」と題して、ワールドウオッチ研究所のクリストファー・フレイビン所長へのインタビューが掲載されている。
世界でエネルギーの「政権交代」が起きている。ここ5年間の自然エネルギー産業の成長はめざましい。風力、太陽光、太陽熱、バイオ燃料など幅広い 分野の技術が同時に伸びている。1950~60年代のコンピューター技術のように、産業や社会に長期的な構造転換を起こしつつある。
スマートグリッド(賢い送電網)もそうした技術のひとつだ。先進的な情報技術を送電網に導入し、電気をより精密に効率よく制御する。電気代に応じ てエアコンを自動的に止めたり、自然エネルギーの変動を受け止めたりすることができる。電力需要が多い時には、充電されたプラグインハイブリッド車から電 気を送ることも可能になる。
日本の電力業界には「日本の送電網はすでに十分スマートだ」という声があると聞くが、もしそうなら、なぜもっと自然エネルギーの電気を取り入れな いのか。欧州では風力発電が20~30%を占める地域もある。日本は10年遅れている。賢くない送電網を使っているか、送電網を扱う人たちがスマートでな いかのどちらかではないか。
電力の需要と供給の変動を新しい技術で賢く調整しようという発想が、日本ほどの技術大国で広がっていないのは不思議だ。
スマートグリッドや蓄電などの技術革新によって、電力システムは低炭素で分散型なものに変わっていく。米国も欧州も中国も、すでにその方向へ動いている。
自然エネルギーは実は扱いやすい電源だ。天気予報によって変動をかなり予測できる。一方、原子力は地震やトラブルで長期間止まることがある。その 予測はとても難しい。原子力や石炭といった大規模なべースロード電源(一定の出力で運転し続ける電源)に頼る電力システムは時代遅れになってゆき、出力調 整がしやすい天然ガスのようなフレキシブルな電源が増えるだろう。
昔みんなが馬車から自動車へ乗り換えたように、便利で優れた新技術が古い技術から置き換わるのは自然な流れだ。米国ではグーグルがエネルギー事業 に非常に興味を持っている。エネルギーや電力を独占事業と考えるのはやめて、何千という会社が競争するオープンなビジネスにしなければならない。
私は以前「『太陽光発電を20倍に』と言うけれど」で、日本で再生可能エネルギーの導入が進まないのは、電力会社が発電による利益を維持しようとしているからだと述べた。日本の送電網が「賢くない、10年遅れている」とはどういうことなのか、どなたか教えていただければ幸いです。
<追記>
「朝日地球環境フォーラム2009」の分科会3「太陽の時代に向けて」での発言(2009年9月26日 朝日新聞朝刊9面)を紹介する。
「(電力業界は「太陽光や風力が増えると送電網の電気が不安定になる」と言うが)太陽光や風力のような分散型電源が増えると、既存の送電網を変えていかないといけない。通信機能や蓄電池を組み込んだ送電線の技術開発に早く取り組むべきだ」(新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)理事・小井沢和明氏)
「送電網を独占する電力会社は、自然エネルギーという異物が入るのを拒否している。自然エネルギーを拡大するには、そういう政治的な問題を何とかしないといけない」(環境エネルギー政策研究所長・飯田哲也氏)
| 固定リンク
| コメント (0)
| トラックバック (0)
最近のコメント