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「太陽光発電を20倍に」と言うけれど・・・

 さる6月12日、麻生首相は「低炭素革命」をうたい、2020年までに温暖化ガスを、1990年比8%(2005年比15%)削減する「中期目標」を打ち出した。

 中期目標を詰めてきた「検討委員会」では太陽光発電は現状(2005年)の10倍にするのが「精一杯」としてきたが、麻生首相が直前に20倍に底上げし、温暖化ガス削減幅を1ポイントアップさせたという。

 「現状の20倍」なんて聞くと、いかにも「革命的」にも聞こえるが、本当のところはどうなんだろう?

200545 202045_2
エネ研日本モデルによる分析結果(中期目標検討委員会本分析結果)」p26、
長期エネルギー需給見通し」p30
 より試算、作図
図の「新エネルギー」は太陽光発電を除く

2005年に日本が消費したエネルギーは原油換算で5.88億キロリットル。そのうち太陽光発電によるものは35万キロリットル、全体のわずか0.06%である。上の左のグラフには表示できない。

 上の右の円グラフは、「中期目標」に沿って「低炭素革命」を行った場合に想定されている2020年のエネルギー源の比率である。 

 太陽光発電を20倍にふやすと言っても、一次エネルギーの、たった1%にすぎないのだ! 

 しかも、2005年と2020年を比べてみると、石炭、天然ガスは21%、15%でまったく変わらない。石油を8ポイント減らして、代わりに原発を6ポイント増やしている。これじゃあ、エコじゃないよね!

既得権益にしがみつく電力会社

 何でこんなに太陽光発電が進まないのか?

 電力会社が嫌がっているからだ。

 電力会社は「RPS(電気事業者による新エネルギー等の利用に関する特別措置)法」によって、太陽光や風力など新エネルギー等から発電された電力を一定割合以上使うよう、義務づけられている。

 しかし、電力会社は「電力の安定供給」を盾に抵抗している。その結果、「義務量」は2010年度でもわずか1.3%に設定されており、新エネルギー等の供給能力をはるかに下回っている。

 風車を立てたくても、電力会社の抽選に当たらないと立てられない、という状況なのだ。

 新エネルギー等の導入を促進するための「利用義務量」が、実は「買取上限」になり、導入を抑制している。

  欧米では電力自由化により、発電部門と送電部門が分離されている。いろいろな発電による電力を公平に扱うためとされている。

 ところが日本では、2002年、電力業界が「安定供給」を掲げて発送電分離に大反対し、送電事業も9つの電力会社が独占している。電力会社がウンと言わなければ、新エネルギー等の電力は受け入れられない。

 太陽光発電や風力発電が増えれば、発電事業での電力会社のシェアは低下する。電力会社が「安定供給」を盾に風力や太陽光発電の受け入れを制限しているのは、シェア低下を恐れているのだろう。

 電力会社は、原発推進を正当化するためにスローガンとして「温暖化防止」を叫ぶのをやめ、本当に温暖化を防ぐためにはどうしたらいいか、「放射能のごみ」をこれ以上増やさないようにするにはどうしたらいいか、考えてもらいたいものだ。

(アース)

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