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2009年5月

日本の太陽熱温水器は中国製より、はるかに遅れている!?

  家庭で出すCO2の実に23%は給湯によるものだという。

 給湯と言えば、ちっともエコじゃない「エコ」キュート(しかも高い!)なんか買わなくても、ふんだんに使える太陽熱でお湯を沸かせばいいわけだ。

 第2次オイルショック以降、1980年代前半までは、日本で太陽熱温水器が普及した。しかし1980年代後半には低迷し、中国が温水器先進国に躍り出てきた。

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 年間の設置面積では中国がダントツだ。

1000

グラフは「電力中央研究所報告」による

 1000人当たりの年間設置面積で見ても、中国は日本の5~6倍に達しているようだ。

 

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 中国有数の工業地帯・山東省の中心都市・済南市はエコタウンを目指し、2010年までにCO2排出量を20%削減すると宣言している。

 切り札は太陽エネルギー。新築の建物に太陽熱温水器の設置を義務づけている。

 太陽熱温水器は約3万円。燃料代が節約できるので、3年で元がとれる計算だという。

 済南市では太陽熱温水器の関連会社が100社以上もあり、市内では3軒に1軒が温水器を設置している。

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 農村部でも太陽熱温水器を普及させている。最近まで電気もガスもなかった済南市艾家村(あいかそん)では自治体などが費用を負担し、全所帯に設置されている。

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 中国の太陽熱温水器はどんなものなのか
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 これは中国から輸入して日本で売られている「サナース」という太陽熱温水器である。販売会社によると、中国では6万円くらいで売られているという。

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 真空ガラス管で集熱効率を高め、コントローラーで温度表示や水位設定もできる。かなり高性能と言えるだろう。

日本製は20万円以上

日本製の太陽熱温水器は?というと、例えばこんな構造である。

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 これは朝日ソーラーのASN-230FB だが、定価が約32万円。長府製作所のエコワイターが約20万円。中国製と比べ、かなり高い。

 しかも、太陽熱で水を温めるのに、日本製は「平板型」集熱器を使っているのに対し、中国製は「真空ガラス管」集熱器である。

 真空ガラス管方式は、魔法瓶のようなもので、お湯が冷めにくい。気温の低い冬でもお風呂の湯を得ることができる。

 長期にわたって真空を維持しなければならないので、平板型より高性能・高コストとされている。

 日本製より中国製の方が、高性能で、かつ、はるかに低価格なようだ。

再生可能エネルギー普及策の違いを反映?

 中国は経済発展を支えるエネルギーの不足と環境汚染に直面し、再生可能エネルギーの促進に本格的に取り組んでいる。

 先に触れた済南市の太陽熱温水器普及策もその一環だろう。

 自治体の費用で温水器を設置したり、新築の建物に設置を義務づけたりすれば、量産効果で価格をどんどん引き下げることができる。

 2007年、中国の太陽熱温水器の生産量は2300万平方メートル、保有量は1億800万平方メートルで世界の76%を占めるという。

 他方、日本では太陽熱温水器の普及策は講じられてこなかった。東京都が2009年4月から補助金を出すようになったのが目立つ程度だ。

 そうした普及策の違いが、太陽熱温水器を巡る現状の、圧倒的な違いとして表れているのではなかろうか。

(アース)

追伸 2012年2月6日の東京新聞朝刊19面「エネルギー再考」に「太陽熱温水器の世界事情」「中国 国家戦略で促進」が掲載されています。


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