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温暖化はIPCCの予想をはるかに超えて進んでいる!

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 さる10月20日、WWF(世界自然保護基金)EU支部は、地球温暖化はIPCCの予想をはるかに超えて進行していると発表した("Climate change:faster,stronger,sooner")。その一部を要約して紹介する。

第4次評価報告書以後の研究を分析

 IPCCは2006年末まで(い くつかは2007年初めまで)に出版された科学論文を調べて第4次報告書を公にした。

 その後も地球温暖化とその影響について研究が進められ、地球温暖化は第4次評価報告書を初めとする予測よりも、はるかに加速されていることが明らかになった。温暖化が続いた場合の影響も、気候モデル研究によってさらにくわしく分かってきている。

 これまで気候変動は過小評価されてきたようだ。たとえば、今日までの1℃未満の温暖化がすでに、夏に北極海の氷が消えるような、地球の気候システムの最初の限界点の引き金を引いてしまったのかも知れない。

 その結果、これまで予想されていたようなゆるやかな変化ではなく、急激な気候変動が起こる可能性がある。

北極海の氷がなくなる!?

 北極海の氷は第4次評価報告書で予想されていたよりも、30年かそれ以上も早く、消えつつある。

2008

 温暖化で海氷が減ると、太陽光の反射が減り、海水が一層暖められ、冬に氷ができにくく、溶けやすくなる。この悪循環によって、温暖化がますます加速される。

 第4次評価報告書ではこの悪循環が非常に過小評価されていた。

 実際、著名な科学者たちが、北極海の氷システムはいま、限界点にある(あるいはすでに限界点を通 り越した)と言っている。これは、まもなく夏の間、北極海の氷がなくなるということである。

 2013年から2040年の間に夏には北極海の氷がまったくなくなると予想されている。これは過去100万年以上の間、地球上になかった事態である。

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「北極大変動 第1集(2008年5月25日 NHKテレビ)」より

 夏に北極海の氷がなくなると、海氷に反射される太陽熱が減り、海面が一層暖められて、地球温暖化を加速する。その結果、これまでの予想以上に急速で急激な気候変動の扉が開かれる可能性がある。

 南極半島の氷河が海に流れ込み、できた海岸氷河の氷は、IPCCの第4次評価報告書に書かれているより早く失われ、海面を上昇させている(Pritchard and Vaugham 2007)。 

海面上昇はIPCC予測の2倍以上に

 1990年以降、海面はIPCCの第3次評価報告書(2001年刊行)の予想の1.5倍早く上昇している(Rahmstorf et al 2007)。

 さらに、最近の研究では、海面上昇は今世紀の終わりにはIPCCの第4次評価報告書で示された最大0.59メートルの2倍以上に達することが示されている(Rahmstorf 2007、Rohling et al 2008)。

 1.2メートル以上も海面が上昇すれば、世界中の広大な海岸地帯が危険にさらされるだろう。

CO2排出は増え、吸収力は低下

 人類の活動によるCO2排出がますます加速している。1990年から1999年には毎年1.1%の増加だったが、2000年から2004年には毎年3%以上増加している。

 2000年以降の増加率はIPCCの第3次評価報告書、第4次評価報告書のいずれで使われているシナリオよりも大きい(Raupach et al 2007)。

 過去15年以上にわたって、人類の活動によって排出したCO2の約半分が大陸と海洋によって吸収されてきた。しかし、そうした「自然の排水溝」の能力はこれまでの予測以上の速度で減少している(Le Quere et al 2007)。

 これは人類の活動によって排出されたCO2が大気中にとどまり、地球を温暖化させる割合が増えるということである(Canadell et al 2007)。

2050年までに80%削減が必要

 第4次報告書で述べられた気候影響を再検討した結果、気温上昇を2℃以下にし、気候への影響を「受容可能」な程度に抑えるためには、2050年までに温暖化ガスを80%減少させる必要があることが明らかになった。

 80%削減すれば、大気中の温暖化ガス濃度は400から470PPM・CO2当量で安定するだろう。

先進国は排出量を差し引きゼロに!

 しかし、80%削減でも、被害はかなりのもので、被害の多くを避けるためには、現在の計画をはるかに超える適応努力が必要とされるだろう (Parry et al 2008)。

 発展途上国には基礎的なエネルギー需要があり、あと数十年にわたって排出量が増えるだろうから、世界全体で80%削減するためには、EUはそれ以上のことをしなければならない。

 実際、WWFは2020年までに1990年レベルの30%以上を削減し、2050年までにEUにおけるネットの排出量をゼロにするよう主張する。

 

 以上に紹介した文書はWWFのEU支部がEU向けに出した文書なので、削減目標はEUについて書かれている。当然、日本、米国を初め、先進国全般に当てはまるものである。

(アース)

 



 

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