「美白」はニンゲン様だけ?
![]() NHK総合テレビ「サンゴの悲鳴が聞こえるよ」(2008.9.8)より |
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エメラルドグリーンの澄んだ海。色鮮やかな熱帯魚たち。
サンゴ礁は実にきれいで、「サンゴ礁の海に一度は潜ってみなければ、その人の一生は、その分だけ貧しくなる」そうだ(本川達雄著 サンゴとサンゴ礁のはなし)。
これは真っ白できれいなサンゴだなぁ、などと思ったら大まちがい。海が熱くなって死にかけているのだ。
サンゴはイソギンチャクと同じ刺胞動物。白くて堅い石灰質の骨格の中に、ポリプが無数に入って、触手を伸ばしている。
ポリプの体内に、褐虫藻という植物プランクトンをたくさん飼っている。
褐虫藻は直径100分の1ミリくらい。ペリディニンという褐色の色素を持ち、サンゴの体内で光合成し、サンゴに栄養を与えている。
海水温が30℃を超えると、褐虫藻がサンゴから逃げ出してしまい、
サンゴが白化する。
(死んで藻が生えてきたサンゴ)
サンゴは自分の触手で動物プランクトンをつかまえて食べるが、これはチッソやリンを補給しているだけ。「主食」は褐虫藻からもらうグリセリンなどの炭素化合物だ。褐虫藻に逃げられたサンゴは「主食」を食べられずに弱り、死んでしまう。サンゴにとっては、「美白」なんて、とんでもないことなのだ。
温暖化で進むサンゴ礁の危機
サンゴは水深10~20メートルの浅い海で繁殖している。深い海では日光が届かず、褐虫藻が光合成できないからだ。浅い海では水温が上昇しやすい。
1988年、ラニーニャ現象で海水温が異常上昇、「1000年に一度の規模」でサンゴ礁が白化した。世界のサンゴ礁の16%が手ひどく破壊され、その40%は回復したが、残りは未回復。
「世界のサンゴ礁の状況2004」によると、サンゴ礁のうち健全なのはわずか30%。26%は今すぐではないが、長期的には危うい状況にあり、24%は危機に瀕しており、20%はすでに破壊されているという。
昨2007年にも大規模な白化が起きている。
今年、環境省と北海道大学の研究班がサンゴ礁の未来予測を行なった。
上の図のピンク色がサンゴ礁を示している。
赤い範囲は、平年の高水温を上回り、サンゴ礁が白化して死滅する可能性が高い所だ。
今後も経済成長を重視し温室効果ガスを排出し続けた場合、2030年代には太平洋のほぼ全域が赤い範囲に含まれる、という。
私はまだサンゴ礁を見ていない。孫、ひ孫にも、きれいなサンゴ礁を見せてやりたいものだ。
(2枚目の画像以外はNHK総合テレビ「サンゴの悲鳴が聞こえるよ」(2008.9.8)より)
(アース)
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