「いのちの宝庫」サンゴ礁/サンゴは欲張り大家?
サンゴ礁は「海の熱帯雨林」と呼ばれる。実にさまざまな生き物がそこで暮らしているからだ。
サンゴ礁の多様な生き物たちを支えている「おおもと」は、サンゴの体内に共生している褐虫藻である。
褐虫藻は太陽の光を浴びて光合成し、作り出したグリセリンなど炭素化合物の約9割をサンゴに与える。
収 入 | 支 出 | |||
呼吸 | 成長 | 体外へ | ||
褐虫藻 | 250.7(光合成) | 24.6 | 0.2 | 225.9(サンゴへ) |
サンゴ | 225.9(藻より) | 103.6 | 2.0 | 120.3(粘液など) |
サンゴは褐虫藻を体内に住まわせて、魚などに食べられないように保護する。
サンゴはいわば大家さん、褐虫藻は店子ということになるが、稼ぎの9割が家賃とは、あまりにも欲張りではないか?
実は、サンゴは褐虫藻に家を貸しているだけではない。もらった炭素化合物の約半分を使って、粘液を作っている。この粘液は透明で、サンゴの体をすっぽり覆っている。そのおかげで褐虫藻は十分な光を浴びることができる。
海底の砂が巻き上げられたり、川から土砂が流れ込んだりするので、海水中には微小な砂粒が漂っていて、サンゴの粘液の上に降り積もってくる。あま り積もると光合成しにくくなるので、汚れた粘液を剥がして捨て、新しい粘液の膜を張る。粘液は透明な使い捨ての上着のようなものらしい。
はがれた粘液の半分以上は、すぐに海水に溶けてしまう。粘液は炭素化合物やたんぱく質からできているので、海水中のバクテリアの餌となる。そのバ クテリアを食べて動物プランクトンが増え、それを餌にする大きな動物が増える・・・というようにして、生態系が成り立っている。
海水に溶けなかった粘液には海水中のバクテリアや単細胞の藻類、動物プランクトンなどがくっついて栄養豊富になる。さらに砂粒がくっついて海底に沈み、底生バクテリアの餌になり、それが底生動物の餌になる。
という訳で、サンゴ礁には多種多様な生き物が暮らしている。その「おおもと」は、褐虫藻が行う光合成なのだ。
上の図は日本最大の サンゴ礁域、沖縄県・石西礁湖(せきせいしょうこ)のサンゴを国立環境研究所と朝日新聞社が調査した結果を示している。
2003年には生きたサンゴが 50%以上を占める海底(緑色の部分)がかなりあったが、2008年にはほとんどなくなり、「5%未満」の赤い部分が圧倒的に増えている。
サンゴの約7割 が失われたという。2007年の白化が最大の原因らしい。
この海域の海面水温の年平均値は過去100年で0.7度上昇しているという。地球温暖化が進めば、この「いのちの宝庫」は壊滅するだろう。
ヒトもまた、生態系の一員だ。「いのちの宝庫」の崩壊は、ヒトにも大問題なのだ。
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