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2008年7月

温暖化を知らせる蝶

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http://www.insects.jp/kon-tyotumaguro.htm より
 このきれいな蝶をご存じだろうか。ツマグロヒョウモンという、タテハチョウ科の蝶の雌である。「ツマ」は「端」、「はしっこ」。ツマグロとは後ろ羽の下端が黒いことを意味している。

 下の写真は雄。やはり後ろ羽の下端が黒く、ヒョウ柄の紋がはっきりしている。
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http://aoki2.si.gunma-u.ac.jp/youtyuu/HTMLs/tumagurohyoumonn.html より
 このツマグロヒョウモンは熱帯・亜熱帯から暖帯に分布する南方系の蝶である。
 幼虫で冬を越すが、短時間なら-4℃程度の低温には耐えるが、5℃では餌を食べない。低温が続くと腹ぺこで死んでしまうわけだ(「日本産蝶類標準図鑑」)。
私が昆虫採集に夢中になっていた数十年前、近畿以西では普通に見られる蝶だったが、東京や埼玉ではとてもお目にかかれなかった。

 ところが最近、埼玉県下でも頻繁に目にするようになった。やはり温暖化が進んだお陰らしい。パンジー、ビオラなどスミレ科の葉を食べる。 
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 上の写真の、背中にオレンジ色のしゃれた筋の入った毛虫が、ツマグロヒョウモンの幼虫である。今年2月28日に自宅のパンジーにいた。去年9月にタネをまき、農薬・殺虫剤など一切使っていないので、秋に産みつけられた卵がかえり、幼虫で冬を越したわけだ。温暖化が進んでいることをツマグロヒョウモンが教えてくれている。
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 上の写真は蛹になる少し前、5センチくらいに成長した幼虫。トゲトゲだらけだが、このトゲはこけおどし。手で触っても何ともない。
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蛹になってもトゲトゲで身を守る。
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2週間くらいで蝶になる。
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「日本産蝶類標準図鑑」より
 ツマグロヒョウモンの分布は上の図のように、関東、北陸まで北上している。
 温暖化のお陰で、関東では見られなかった蝶が見られるようになったわけだ。
 私のような昆虫好きにはありがたいことだが、ガーデニングの立場からすれば、とんだ害虫が進出してきたわけである。
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「生活ほっとモーニング」より
 7月29日の「生活ホットモーニング」(NHKテレビ)によると、北海道利尻島で獲れるウニが減っているという。海水温が約1℃上がり、高温に弱いエゾバフンウニが激減。

 エゾバフンウニを増やすため、卵から施設で育てた子どものウニを海に放流したり、餌となる昆布を確保するためにほかの海草を海底から駆除したりしているという。

 今まで獲れなかった魚が、温暖化で獲れるようになった、温暖化のお陰です、といった話があっても良さそうなものだが、「温暖化のお陰」でダメになったという話ばかりが聞こえてくるのはどういうわけだろうか。
                                         (アース)

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再生可能エネルギーで人類再生を

 地球という石油製造装置は、2億年以上の膨大な歳月をかけ、生物の死骸から年間3000トンの石油を作りだした。それを人類は年平均30億トン燃やし、200年で使い果たそうとしている。人類は製造スピードの100万倍の速さで消費している事になる。
そして石油が枯渇し始め、CO2が問題になると、これはチャンスとばかり原発が浮上してきた。

 先日、温暖化とエネルギーの専門家と称する大学の先生の話を聴講。
「原発はCO2を出さないクリーンなエネルギーだから原発を増やすべきだ」と始まった。
そして核廃棄物の問題について「核廃棄物にトイレが無いと言われるが、CO2だってトイレが無いじゃないか」
はて! この先生は核廃棄物とCO2を同レベルで見ているようだ。
専門家としてはとんでもなく無知で無神経だ。
CO2は空気中に有っても有害ではない。量の問題である。
かたや核廃棄物は空気中に少しでもばら撒かれたら、たちまち放射線障害を起こしてしまう。
保管するにも何重にもシールドしなければならない。
核廃棄物は放射性物質で恐ろしく汚いものであるからトイレが無いと言われる所以である。
だから誰もCO2にトイレが無いとは言わない。

 それにしても安全でクリーンな、しかも無尽蔵な自然エネルギーを、なぜ使わないのだろう。
経済産業省の資源エネルギー庁は原発立国と称して再生可能エネルギーには消極的である。
世界的に見て日本は再生エネルギー後進国になってしまった。

 日本は技術的には世界一のはずが、再生可能エネルギーに関しては後進国。
テキサスの石油メジャーの連中は石油枯渇の恐怖と温暖化対策を考え、方向転換をし、投資総額は20億ドル、4,000メガワット以上、130万世帯の電力をまかなうことができるウィンドタービンを建設中。
ソーラーパネルは2007年における世界の太陽電池生産量が51%増加して、3,733メガワットに達した。世界で設置された太陽電池モジュール発電量は 2,935メガワット以上で、1996年から累計すると9,740メガワット以上に達するという。欧州300万以上の家庭における年間電力需要が賄える。
この1年で、欧州はドイツに率いられ、太陽電池生産量で日本を追い越し世界をリードした。欧州の2007年発電容量は1,063メガワットと推定される。 太陽光発電装置設置数においては、ドイツが全体のほぼ半分を占め、群を抜いて世界第1位。設置数第2位はスペインとなっている。

 米国は太陽電池生産量がかなり増加したにもかかわらず、その生産量と設置数において、世界で米国が占める割合は減少を続けた1年となった。

 日本も少しは頑張っているようだ。
北陸電力は、大規模な太陽光発電所(メガソーラー発電所)の建設に向けた検討を始めた。温室効果ガスである二酸化炭素を排出しない再生可能エネルギー導入促進策の一環。太陽光発電所の場所や規模、発電開始時期に加え、他の再生可能エネルギーも含めた具体的な行動計画を10月末までに策定する。
関西電力とシャープ(大阪市)が2011年に堺市で出力2.8万キロワットのメガソーラー発電所を稼働させる。出力は志賀原発2号機の2%だが、世界最大級の太陽光発電所となる。

                                       byエコエンジェル

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石油がなくなる!? ガソリン値上げの背景

 

石油・ガソリンが何でこんなに高くなってしまったのか?

 サブプライム・ショックで逃げ出した投機マネーが石油市場に流れ込んでいると言われている。
 本当に、それだけ?

 10年も前に、「世界の石油生産は想像以上に早くピ-クを迎え、2010年までには石油価格は高騰し始めるだろう」 と言っていた人たちがいるそうだ。ASPOという、石油不足に警鐘を鳴らしてきた団体のC.J.キャンベル氏らだ。

 2008年の今まさに、石油が高騰している。
 石油生産は一昨年、ピークに達したようだ。
 昨年の生産量は一昨年にくらべ0.2%、日量12万6,000バーレル減少している。

 石油が足りなくなれば高値になるのは当然だ。

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       図1  「Statistical Review of World Energy 2008」を元に作図

石油の半分をつかってしまった?

 石油は「いくら使っても無くならない」ようなイメージがあるが、世界第2位の埋蔵量を誇るブルガン油田(クウェート)は1938年に発見された古い油田である。

 世界最大のガワール油田(サウジアラビア)は1949年の発見。埋蔵量はほぼ半分になり(「石油 1億6千万年の旅」2008年6月28日BS1放映)、自噴圧力を維持するために海水を注入している始末である。

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     図2 
Bartlett議員:2005米議会の証言資料を改変

上の図から分かるように、世界の油田発見のピークは1965年。最近は大きな油田は見つかっていない。これでは石油が無くなる日は近い。

埋蔵量統計はインチキ

 1979年の第2次オイル・ショック以降、石油消費が低迷し、OPECは国別に生産枠を決めて生産調整する事態に追い込まれた。国別生産枠を決め る際には、確認可採埋蔵量が大きいほど有利になる。1983年以降、OPEC各国は次々に確認可採埋蔵量を引き上げ、わずか6年間に3,050億バレルも急増、その後は横ばいである。

 石油の確認可採埋蔵量統計なるものは、実は産油国の数字をそのまま発表しただけで、何ら検証されていないのが実態だ。掘っても掘ってもなくならい「ミラクル」はこうして演じられてきたのだ。

 自然エネルギーを推進せよ

 上の図にもあるように、石油の消費は今後、多少のでこぼこはあっても、年々減少していくだろう。すでに日本でもガソリン高騰で車が減り、漁師たちは廃業の瀬戸際に追い込まれている。産油国は石油を売り惜しむだろう。

 上の図の予想どおり石油消費が減退すれば、2050年にCO2排出量半減も夢ではないかも知れない。しかし、それでは不景気が蔓延するだろう。石油頼みを脱し、太陽光発電、風力発電などの自然エネルギー利用を中心にする必要がある。

 自動車はガソリンがなくても電池で走れる。モーターボートもある。しかし飛行機を電池で飛ばすのは大変そうだ。プラスチックを初め、今日の工業製品の大部分は石油を原料に生産されている。一体、どういうことになるのだろうか?

 ハルマゲドン?

 一番心配なのは、石油をめぐる戦争だ。アメリカは未だにイラク戦争を続けているし、「専守防衛が国是」のはずの日本だって、油断はできない。下手をすれば石油の争奪戦でハルマゲドンということにもなりかねない。そうしないためにも、省エネだけでなく、脱石油-自然エネルギーへとシフトさせていかなければならない。

                                          (アース)

 

 

 

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温暖化と天然ガスパイプライン

地球をホットにする温室効果ガス、今1番量的に多いのはCO2である。
温暖化効果を持つ気体は他にも沢山ある。
温暖化の元である赤外線吸収率、言い換えれば暖め度である。
高いものを順に並べてみた。
CO2を1とする。
六フッ化硫黄(SF6)        23,900倍
フロン類          7,000-9,000倍
プロパン類          500ー6,000倍
亜酸化窒素(N2O)           310倍
メタン(CH4)                                    21倍

メタンは量的には2番に多い。
メタンガスは天然ガスの主成分である。
メタンの大気中濃度は1800年まで一定だったが、現在までに3倍になってしまった。
勿論人類が天然ガスを使い始めたからだ。
現在世界では天然ガスを膨大な長さのパイプラインを使って輸送している。

具体的に中国のパイプラインの長さを見ると、2006年末までに4万キロメートルになり、
地球一周分である。
さらに2015年までに天然ガスのパイプラインだけで総延長が10万キロメートルを超える見通しである。

 『パイプラインの危険性』

これだけ長いと途中で漏れたり爆発したりするのだ。
2007年5月8日、非常事態省のViktoria Ruban報道官によると、シベリアからウクライナを経由してドイツやほかの欧州各国にガスを運ぶパイプラインが「大きな爆発」によって切断されたと発表。
ロシアから欧州連合(EU)へ天然ガスを輸出している主要パイプラインの1つが爆発し、輸送が停止した。爆発は現地時間の午後2時25分ごろ首都キエフ(Kiev)に近い場所で発生し、長さ30メートルのパイプが破裂、150メートール離れたところまで破片が飛び散った、とあるが、相当の量のメタンが拡散し温暖化ガスをバラ撒いたはず。
パイプラインは世界中に張り巡らされ、何十万キロあるか解らないのである。

現状では全てを点検監視するのは不可能だそうだ。
そこで日本では温室効果ガス観測技術衛星『GOSAT』を暮れから平成21年にかけて打ち上げる。
GOSATはパイプラインのメタンガス漏れを監視する役目も担っている。

所属     JAXA
製造     三菱電機
NSSDC-ID     -
NORAD No.     -
打上げ機     H-IIAロケット
打上げ場所     種子島宇宙センター
打上げ日時     2008年度予定
軌道     太陽同期準回帰軌道
高度     666km
軌道傾斜角     98度
周期     約100分
回帰日数     3日
設計寿命     5年
運用停止年月日     -
Web     温室効果ガス観測技術衛星
「GOSAT」
物理的特徴
本体寸法     2.4m × 2.6m × 3.7m
最大寸法     13.7m(太陽電池パドル翼端間)
質量     1,750 kg(打上げ時)
発生電力     3,800W(寿命末期)
※資料により3.3kW~4.0kWとばらつきがある。
姿勢制御方式     3軸姿勢制御方式
(異常時:太陽指向スピン安定)
ミッション機器
TANSO-FTS     温室効果ガス観測センサ
TANSO-CAI     雲・エアロソルセンサ

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アルゼンチンの氷河崩落を見る!

0606_10_p01  地球の歩き方より

 この美しい氷河はアルゼンチン南部・パタゴニアにあるペリト・モレノ氷河である。
 内陸にあって、湖に面している。

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 その氷河の先端部が7月9日に大きく崩れ落ちるビデオが、ロイターから配信されている。たまたま現場にいたアマチュアが撮影したもので、崩落の瞬間、展望台には数人しかいなかったという。

 下の写真も配信されている。 

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        崩落前(左)         崩落後(右)

 南半球の冬に崩落するのは異例のことだが、「明確な記録はないが、1917年と51年の冬にも同じ現象があったとされる」とする記事もある。地球温暖化との関係が心配されている。

 

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飽食サミット

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 上に載せたのは、洞爺湖サミット初日に福田首相の主催で行われたG8首脳夕食会のメニューである。「毛ガニをまるごと使い、身の甘さとカニみその濃厚さが口に広がる」スープ、「炭火でじっくり焼き上げた」「鮮やかな赤が特徴の」「網走産キンキの塩焼き」、「白糠町産の子羊」の「背肉をポアレにし、 朝採りのアスパラを添えた」和牛冷しゃぶに、シャンパン、ワインなど、ずいぶん豪勢な食事だ(2008年7月8日毎日新聞朝刊31面)。

 こんな飽食サミットでは、毎日1万3千人以上の子どもが栄養失調で死んでいるアフリカなどの情況を改善できるわけもない。

 福田首相は、「すいとん」は無理でも、せめて精進料理でも振る舞って、ブッシュ大統領はじめ各国首脳に、自分たちが引き起こした温暖化による干ばつ・食糧危機などに思いをいたさせるべきだったろう。

                                         (アース)

 

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温暖化対策に必死に抵抗したアメリカ

 さる6月26日、BS1で「アメリカ 石油依存の構図 ~遅れる温暖化対策~」が放映された。WGBH(ボストン公共放送局)という米国のテレビ局が昨年制作した番組である。
関係者の証言をもとに、1988年以来、約20年におよぶ米国の温暖化対策放棄の裏事情を明らかにしている。

温暖化を社会問題にした
NASA研究者の勇気ある証言

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ジェームズ・ハンセン

1988年、温暖化に危機感を抱いていた民主党のティモシー・ワース上院議員は、NASA(アメリカ国立航空宇宙局)のジェームズ・ハンセンに上院エネルギー委員会の公聴会で温暖化について証言するよう依頼した。  

  ハンセン博士はNASAのゴダード宇宙研究所で気候変動について研究していた。

 博士は「世界中で実際に気温が上昇していて、それが人間がさまざまな形で排出する温室効果ガスによるものであることを99%確信している」と証言した。

 「ハンセン博士は連邦政府に雇用されている立場だったのに、政府の許可を得ずに証言した。勇気ある証言だった。」(ワース議員)

 この証言は新聞各紙で大々的に報道され、温暖化に注目が集まることとなった。

 この年11月にはIPCC(気候変動に関する政府間パネル)が発足した。

条約に署名はしたが・・・・・・

 1992年6月、ブラジルのリオデジャネイロで「地球サミット」(国連環境開発会議)が開かれた。大統領選挙でクリントン候補は現職の父ブッシュ大統領がこの「地球サミット」に参加し、気候変動枠組み条約に署名するべきだと主張した。

 政権内では、地球サミットが環境保護派の大会のようになってアメリカが袋叩きになると心配する人もいた。ブッシュ大統領は「環境に配慮するアメリ カ」をアピールできると判断して出席、気候変動枠組み条約に署名した。アメリカは先進国の一員として「2000年までに温室効果ガスの排出量を1900年 のレベルまで引き下げる」ことを約束した形になった。

 しかしブッシュ大統領は環境より経済が優先課題だと明言し、温室効果ガスの削減目標を、法的拘束力のない任意のものにするよう主張した。

エネルギー・自動車業界が猛反撃

 こうしたブッシュ大統領の動きに呼応して、地球温暖化対策への抵抗が強まった。エネルギー関連企業と自動車業界が共和党を、その労組が民主党を動かした。こうした企業は共和党に多額の選挙資金を提供しており、民主党は労組の支持票に大きく依存していた。

 1993年には民主党のクリントンが大統領、ゴアが副大統領に就任し、温暖化ガス削減のためBTU税というエネルギー税を導入しようとした。しかし、与党・民主党の反対により、廃案となった。石油・石炭の生産に頼る西部選出の議員が強硬に反対したのだった。

メディア・科学者も動員して反撃

 メディアを使ったキャンペーンも始まった。エネルギー業界が資金を出し、地球温暖化対策に反対する動きに出た。

 「二酸化炭素濃度が2倍になると緑化が進みます」(石炭会社の団体)

 科学者を動員して、不確実な点をクローズアップしたり、地球温暖化は作り話だと主張したりした。科学者にばく大な金が渡っていたという証言もある。

「温暖化を否定していた科学者の数人はおよそ100万ドルを受け取っていたことを突き止めた。私たちが公表するまで一切表に出ていなかったことです。」(ジャーナリスト ロン・ゲルブスパン)

 共和党の議員たちは温暖化自体を疑うことを支持した。

京都議定書への反対論が席巻

 1995年12月、地球温暖化は人間の活動で発生する温室効果ガスが原因だとするIPCCの第2次報告書が発表された。1997年12月の京都会議では、に法的拘束力のある温室効果ガス削減目標が課題となっていた。

 京都会議を前に、エネルギー業界と自動車業界は、CO2の排出削減義務化に反対を唱えた。アメリカ議会では「中国とインドに削減義務を負わせられ ないということは、中国とインドの製造業をさらに増やして、彼らに大きな経済的優位を与えることになる。環境に配慮するとアメリカのビジネスコストは高く なる。」という意見が支配的だった。

 上院は党派を超えて反対した。石炭産業が盛んな州から選出された民主党議員と共和党議員、この二人が共同でインドと中国が含まれない条約に反対する決議案を提出。
賛成95,反対0で決議案は採択された。

 京都会議でアメリカ代表団を率いていたゴア副大統領は、アメリカが京都議定書を支持すると明言した。しかしワシントンでは、クリントン政権が上院での承認を断念していた。

ブッシュ政権は京都議定書を離脱

 1990年代後半、アメリカは好景気に沸き、かつてないほど大量の二酸化炭素を排出していた。

 2000年の大統領選挙では、ブッシュ候補はゴア候補に対抗して温室効果ガス削減の義務づけを掲げていた。選挙に勝つと、二酸化炭素削減の義務化を主張していた前ニュージャージー州知事 クリスティン・ホイットマンをEPA環境保護局長官に抜擢した。

 ところが、就任後まもなく、ホイットマン長官がイタリア・トリエステで開かれた地球温暖化に関する会議に出席している間に、方針がひっくり返され た。石油業界と深く結びつくチェイニー副大統領のもと、エネルギー作業部会が開かれ、大統領がCO2の排出削減の義務化を約束したかどうかが問題になっ た。チェイニー副大統領のオフィスは、大統領が削減の義務づけを公約してはいないと主張、ブッシュ大統領は「二酸化炭素を削減する」という選挙公約を翻す ことを決定した。

 イタリアから帰ったホイットマン長官は大統領に面会を求め、温暖化対策の必要性を縷々説明しようとしたが、大統領は「すでに決定は下された」と告げた。

 2001年6月、ブッシュ大統領は京都議定書からの離脱を宣言した。世界各地で抗議行動が行われた。

温暖化対策の研究を検閲、中止、抹消、圧力

 「ブッシュ政権の一年目からそうした検閲が始まりました。京都議定書を離脱したのと同じ頃からです。ホワイトハウスは気候の変動がもたらす影響の 研究をすべて廃棄するようにと言ってきました。完成したばかりの研究だったのです。」(米国気候科学プログラム リック・ピルツ)

 1000万ドルが投じられたこの研究(CLIMATE CHANGE IMPACTS  ON THE UNITED STATES)は全米規模で温暖化の影響を分析したものだった。

 「気候変動がもたらす影響評価については一切掲載するなという指示でした。それにより政府文書の目録からも削除されたのです。」(ニューヨークタイムズ記者 アンドリュー・レブキン)

  1988年に上院公聴会で証言したハンセン博士が温室効果ガスを早急に削減するよう求めて以来、ブッシュ政権は彼が話をしないよう圧力をかけている。ハンセン博士はNASAのゴダード宇宙科学研究所の所長を長いこと務めているが、NASA本部は広報担当官に対し、ハンセン博士の講演原稿、発表論文、研究所ウェッブサイトへの書き込み、さらにジャーナリストからの取材依頼をチェックするよう命じられたという。

 ハ ンセン博士は、2005年12月6日、地球物理学会の集まりで「地球温暖化の原因である温室効果ガスの排出を相当削減しなければ、気象変動が次々と起こっ て、地球はそのうち“違った惑星”になってしまう」と言った。続いて15日には、2005年が少なくともこの100年間で最も暖かい年になることを示す データを発表した。

 すると、NASA本部の高官が広報担当官に何度も電話して来て、その種の発言が今後も続くならば「深刻な結果」になることを伝えてきたという。

 

流れは変わった?

 2005年8月、アメリカ南東部を襲った巨大ハリケーン・カトリーナは1,800人以上の犠牲者を生んだ。カトリーナのような天災に遭遇した人々は、温暖化の脅威を実際に身をもって感じていた。

「アメリカ人は気象のパターンが20年前と同じではない、季候が変わりつつあると皆感じています。そしてこれは単に自然のなせる技なのか、それとも 何か他の要因があるのかと思いを巡らせています。以前は誰もそんなことは考えもしませんでした。」(共和党調査スタッフ フランク・ランツ) 

石炭火力発電所建設計画を撤回

 アメリカでは過去30年近く、石炭火力発電所の新設はなかったが、天然ガスと対照的に石炭価格は安価で安定しているため、巨大電力会社TXUはテキサス州で11基の石炭火力発電所新設計画を打ち出した。

 石炭火力発電は天然ガス発電にくらべ、はるかにCO2排出量が多い。地域住民、環境保護団体、テキサス州各都市の主張などが発電所の建設差し止めを求め、訴訟を起こした。

 2006年2月、買収ファンドのコールバーグ・クラビス・ロバーツ(KKR)とテキサス・パシフィック・グループ(TPG)がTXUを買収、環境保護団体との交渉で以下の4点を確約した。
・新規に建設予定の11基の石炭火力のうち、8基について計画を破棄すること。
・TXUが他州で石炭火力を稼動させる計画を中止させること。
・温室効果ガス削減目標の義務付けを連邦政府に求めるUSCAPの活動を支持すること。

・二酸化炭素排出量を2020年までに1990年レベルまで削減すること。

 

カリフォルニア州は温暖化対策法を制定

 2006年9月、カリフォルニア州では共和党のシュワルツェネッガー知事が二酸化炭素の排出削減を義務づける、全米初の画期的な法律を導入した。

「連邦政府の行動は待てません。我々が行動を主導します。」(シュワルツェネッガー知事)

「カリフォルニア州はなかなか腰を上げない連邦政府にしびれを切らしたのです。州の水資源局の調査ではすでにシエラネバダ山脈の雪の量が大幅に減少 していることが明らかになっています。州の飲料水や農業用水の3分の1をまかなっているのがこの雪です。このままだと2050年には雪の量は3分の1にな るということでした。」(カリフォルニア州環境問題顧問 テリー・タンミネン)

 

エネルギー業界も温暖化対策を歓迎

 2007年2月、意外な団体が上院公聴会を訪れ、連邦レベルで地球温暖化に取り組むよう訴えた。

「この団体にはGE、デュポン、BP、キャタピラーなど世界的な大企業が含まれることを強調しておかねばなりません。またデューク電力、PG&Eといった大手エネルギー関連企業も含まれます。」(民主党 ボクサー上院議員)

 これら大企業の代表者たちは、温暖化の現実、州ごとに温暖化の規制が敷かれることへの不安、さらには新しいビジネスチャンスへの期待から、CO2の排出抑制を義務づけるよう連邦政府に要請した。

「我々は気候変動を最も切迫した環境問題であると考えています。世界最大の温室効果ガス排出国として、米国は率先して取り組むべきです。」(PG&E ダービーCEO)

「国の温暖化対策には温室効果ガスを排出するすべての経済分野を組み入れるべきです。」(BPアメリカ エルバート副会長)

「米国の自由経済を支えてきた大企業が団結して環境保護を訴えたのは注目すべきことです。」(共和党 ウォーナー上院議員)

 終わりに

 石油業界とつながりの深い現ブッシュ・チェイニー政権はイラク戦争を引き起こし、洞爺湖サミットを目前に控えた今も、CO2削減の義務化に抵抗している。

 しかし、アメリカの産業界は、新大統領が登場する来年以降はCO2削減の義務化は不可避と見極め、温暖化対策を新たな金儲けのチャンスと期待しているようだ。

                                         (アース)

 

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