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北極で加速する温暖化

 温暖化は予想以上に急速に進み始めているようだ。
 先日放映された「北極大変動 第1集」を中心に紹介する。

 下の2枚の写真を見比べてほしい。

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「北極大変動 第1集(2008年5月25日 NHKテレビ)」より

 北極海の氷は1980年からの27年間にすでに40% 融けている。
 氷が融けると、太陽光の反射が少なくなり、海が暖められ、地球の温暖化が加速される。温暖化の悪循環だ。

 北極圏の氷河(氷床)も急速に融けている。

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氷河の表面で融けた水が
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割れ目(ムーラン)に流れ込み、
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ムーランを通じて氷河の下に入り込む。
Photo_2
すると氷河がわずかに浮き、
岩盤との摩擦が小さくなる。
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氷河の流れが加速し、
大量の氷が海へ出て行く。

 「北極大変動 第1集(2008年5月25日 NHKテレビ)」より

北極海の氷が融けると、氷河の流出を加速する。

50tr361_4 2007年の春、シベリア、アラスカ沖の
広い範囲で氷が融け、海面がのぞいた。
50tr361_5 そこでは海水が蒸発し、上昇気流によって低気圧が、氷の上には高気圧が生まれる。
50tr361_6 その間を強風がフラム海峡に向かって吹いた。
50tr361 この風はもともとの氷の流れを加速し、
50tr361_7 大量の氷が北極海から出て行ってしまった。

「北極大変動 第1集(2008年5月25日 NHKテレビ)」より 

 こうした悪循環の結果、2007年、北極海の氷は激減した。

2008

ICE MELT ACCELERATES AROUND THE WORLDの図2を改変

 1953年から2006年まで、北極海の9月の氷は10年で7.8%ずつ減少していた。これは気候モデルによるシミュレーションの3倍に達していた。2007年9月には、実に20%以上も減少した。

 北極周辺の氷が融けると、さらに大きな問題が生じる。

  1.  グリーンランド沖には大気中のCO2を大量に取り込んでいる海域がある。ここでは北極の寒さで冷やされて重くなった海水が沈み込み、CO2を深海に運んでいる。北極が温暖化すると、この流れが細くなり、大量のCO2が大気中に残ってしまう。
  2. 北極周辺の永久凍土が融け、土壌中の最近の活動が増え、大量のCO2が発生する。

 温暖化の影響を受けやすい北極は、地球のカナリアである。氷の減少に見られるように、地球温暖化は今や坂道を転げ落ちるかのように加速されつつある。レスター氏が指摘しているように、「2050年までにCO2排出を半減」などと悠長なことを言っている場合ではないようだ。

 ホッキョクグマは氷上のアザラシを捕まえて食べる。2007年は氷のない期間が例年より2ヶ月も長く、ホッキョクグマは絶滅寸前に追い詰められている。人類の近未来を暗示しているのだろうか。

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 スバルバル諸島で餓死していたホッキョクグマの小熊
「北極大変動 第1集(2008年5月25日 NHKテレビ)」より 

                              (アース)

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